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Re: Potential 第二章開幕!オリキャラ募集中です! ( No.67 )
日時: 2010/10/31 20:56
名前: ほすとさむらい ◆hLYmfkI/ok (ID: DxRBq1FF)

—————5年前

_______寒い・・・・
いつからここに入っている?
さあ・・・・・ただ、ここ以外の空間を見たことがない______

第十八話[回想③〜氷川榊,桑原大樹の場合①〜]

目の前には鉄格子。虚空しか見つめることの出来ないこの空間は虚しさだけが痛々しく物語っていた。
小さな・・・小さな・・・頃からここにいる。静かだ。静寂している。
なに、いつものことだ。言葉を交わしたことすらない。
いや、あったか。そう_______

また白い防具を着た男が来た。お盆にはパンと水があった。鉄格子のわずかな隙間からそれを入れる。
数人居た。それらがすべて台車をひき牢屋の者たちに支給する。
そんなもので空腹が収まるのかって?それが収まるんだよなァ。
だって昔からこの飯しか食したことがない。いや・・・それ以前にあのおかしな注射のせいだろう・・・と記憶の奥底から引きずり出し妄想していた。

過去______そうだ。
病院・・・生まれた・・・両親に抱かれていた。同じ病院で入院していたほかの両親もいる。
両家族が赤ん坊を抱く。何故覚えてるのだろうか。
黒服の男達が派手にドアを開ける。赤ん坊二人を無理やりに取り上げる。家族たちを皆殺しにする・・・。
それから______研究所でいろいろと・・・・物心付く前からここに打ち込まれた。
そのとき一緒にいた同じくらいの歳の男の子・・・それが・・・あのときの子なのか・・悟った。
曖昧な記憶の中で繋ぎ合わせる。人生そのものがパズルのピースなのだから。

_____・・・?・・・・名前?・・・・分からない。
名前なんて知らない。俺の名前はポテンシャル1号。
俺の隣の牢屋の男、それがポテンシャル2号。それだけを知っている。
あるとき、俺の体に異変が起きた。異変そのものが分からない。
背中から突き出るソレはなにか。蒼く白く、誠実な翼。
羽根が飛び散り、狭い牢屋にぶち当たる。

暗黒に包まれていたこの空間に初めて一つの光が差した。
翼を伸ばす。肩の荷が下りたように軽い。いきおいよく鉄格子を殴ろう、そんなよく分からない衝動に駆られた。

続く。