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そいつは、紅の剣を片手にたった一人でアルドラを湖の底に沈めた。
ジャックが出発する15分前、そいつはその国に居た。

「パイナッポル？ 食べると口がかゆくなる奴の亜種かな？」

茶色の長髪を金属板をひん曲げただけの単純な紐で縛り付け、誰もがあからさまに分かるほど海賊と言うイメージそのままの服装の見た目17，8歳ほどの女だった。
腰には、剣など無く、紅のものといえば肩に小さな紅の龍がいるくらいだった。
そう、その龍こそが紅の剣……！
そんな事を感じさせぬほどそいつの表情は温厚で、それで居て冷えていた。
突如出店で立ち止まった。
洋菓子店の様だ。

「おばちゃん、そこのビスケット5キロ頂戴。いくら？」

「すごいねぇ、たくさん買っていく人なんて業者さんくらいなものなのに。5キロで400＄よ」

その言葉にクスクスと笑うと金を渡すと同時に何はや言葉が走り書きされたメモを一緒に渡した。
内容は、

数時間後、この国は湖の底に沈む。
私が沈める。

それだけだった。
当然、出店の婦人は国家兵のトランプやチェスの存在を知っている。
そうなればと当然、

「あんた、トランプかチェスの兵隊さんかい？」

その言葉に再びクスクスとそいつは笑う。
そしてこう耳打ちした。



「私はゲームのプレイヤー」



と。
その言葉が発された直後、異変が国中で起こった。
チェス、トランプの兵隊全てがその国から撤退したのだ。
護衛任務を無視し、国内戦は引き上げる。
一瞬にしてこの国は他国から殆ど無防備な状態となったのだ。
ジャックも例外ではなく国外戦へと向っている。
そしてその1時間後、その国は巨大な間歇泉に飲み込まれ、生暖かい湖と化したのだった。