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「アリス、貴方ホントにアリス？」

ネルが奴に問いかけるが、反応がない。
同じ魔神同士であれば、恐らく面識もあるのだろうが、反応などしなかった。
それに違和感を感じたのか、アリスと呼んでいる奴の剣をネルは握りながらまじまじと凝視し、

「先生じゃないね、君誰？ 本物ならさ、私ごとき剣一本どころか片手で殺せるはずなのに私が素手で押し返せるなんて」

アリスの強さも半端ではないが、ネルの強さも半端ではなかった。
剣を素手で握り、出血もなく押し返しているのだ。
しかし、先生って何だ？

「君、誰？ ネルなんて魔神、居たっけ？」

アリスがネルに初めて口を利いた。
しかし、その言葉はさめている。
そんなやり取りの直後だった、ジャックの居るベッド横のクローゼットが開き、中からアリスと呼ばれていた奴がもう一人出てきた。
……もう一人？
まさか、

「双子か？」

「アリスは双子じゃないよ。どうせ神器を奪われたんでしょ」

ジャックにネルが答えるのとほぼ同時にアリスはネル退いた所へいくとペンダントを剥ぎ取った。
ペンダントの掛かっていた首筋から一気に変身が解けていく。

「神器を持てば神の力を得られるのは結構知れた話だけど、その力を取り上げられた時に死ぬのは知られてなかったみたいね。君、私の隙を突いたつもりだろうケド、無駄。私は周囲の出来事が全て分かるから、盗んだつもりでも盗めてないの」

「周囲の出来事全てが分かる……？ そんな能力ないだろう？」

偽者の口調が一気に変わると茶色い髪が青く変色し、瞳が紅へと変化した。
どうも、女であることに変わりはない様だが、髪の変色などと同時に右腕が黒い筋肉質の魔物の腕へと変化する！

「おいおい、マジかよ」

ジャックがその場で絶句する。
魔物は大体からだの一部を見れば判別できるほど種の違いが激しい。
この魔物は、魔物の中でも怪力の、

「何で……イフリート…… !?」

「分が悪いな、退散させてもらうよ！」

しかし、怪力の腕を持った彼女はその場でアリスを投げ飛ばすと、壁へととけるようにして逃げ込んだ。
魔物の中でトップクラスの怪力なのに、分が悪い…… !?
ジャックは唖然としながらも、改めてアリスに刀を構えなおし、

「で、今度は本番か？」

敵意を向けず、臨戦態勢へと移った。