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Re: 世界をボードに魔術【ゲーム】のバトル    ( No.54 )
日時: 2010/10/24 16:44
名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: NN.yKTYg)

バイクを走らせる事8時間。
真っ白だった空にもすっかり日が昇り、凄まじい熱光線がジャックの体力を蝕んでいた。
だが、ジャックの意識は保たれ続けていた。
意識が薄れるたびに、ジャックの耳元で誰かが囁くのだ。





——逃げ続けなくてはならない、とまれば悪魔が貴方の命を奪うから——




と、それだけの言葉を意識が薄れるたびに何度も何度も聴いていた。
最近、そういう言葉が聞こえる事が多い。
共通点は女の声で、幼い感じ。それだけだが、言っている内容に意味がないとは思えなかった。

“ジャックの前のジャック適合者は幼い女の子”

その事実はジャック適合者が既に存在し、適合後に拒絶された事をジャックは知っていた。
彼女は、トランプのジャックの力を利用し、人を助けようとした。
それが原因で殺人トランプの能力に拒絶されたのだ。
幸い、ジャック自身は未だトランプの能力を開花させては居らず、現時点では拒絶待ちの状態だった。
そもそも、ジャックの名前自体が既に政府はトランプ適合実験を幼児で行っている事を指している。
政府の人体実験の、核たる証拠がジャック自信なのだ。
しかし、政府は既に存在しない。
この証拠の向け場もなければ、ジャックをこの忌まわしい能力から解放する術さえ存在しない。
その研究も一応は存在したが、いまや国のあった巨大湖のそこで微生物の餌にでもなっているのだろう。

バイクを運転し続け、とうとう限界が来たジャックはバイクのエンジンを切り、道とも呼べぬ道の脇に避けるとその場に倒れるように眠りについた。
意識がどんどん薄れていく——…・・。
しかしその間も誰かが、

——逃げ続けなくてはならない、とまれば悪魔が貴方の命を奪うから——

ジャックの耳元で囁き続けた。
絶え間なく耳元で聞こえるその言葉に、ジャックは無意識に耳を塞ぐかのような行動を続ける。




——貴方が逃げないのならば、貴方の変わりに私が逃げる——




その言葉の直後、ジャックは目を覚ました。
ベッドに寝かされ、近くに水の入ったビンが置かれていたが、不思議と水を今しがた既に飲んでいたような気がした。

「ここは……何処だ?」

ただ口をついて出るのはその言葉だけ。
それ以外には何もいうことがなかったからだ。
まずは、現在地を知る事が先。
ベッドから起き上がると部屋のドアを開け、部屋の外へ出た。
どうやら、どこかの宿らしい。
受付に行き、

「ここは何処だ?」

なんて聞くことも出来ず、外へ出た。
空には美しい満月が出ている、夜になっていたらしい。
目が……闇に慣れてきた。
ジャックの瞳が周囲を見渡す。


「……嘘だろ」


今居るのは、アーレイン漁港。
ジャックの倒れた所からはまだ500km以上も離れていた。
宿の表にバイクが止めてある。
無意識でバイクを運転し、ここへ……?