ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一話「始まり…」 ( No.4 )
日時: 2010/09/26 00:12
名前: 茶侍 (ID: tA56XhER)



+第一話「始まり…」+

「いたぞ!つかまえろっ!」

「あっちへ行ったぞ!絶対に逃がすんじゃないぞ!」





ハァ・・・ハァ・・・



とある城の奥、少女のリズムが取れていない息が静かに響いていた…

何も聞こえない・・・ただ、"逃げろ"と本能が言ってる…



「シュナ!シュナ!どこなの!?隠れていないで出てきなさい!」



どこからか大人の女性の声が耳に響いていた…

だが、今はそんなことが頭に入ってくるほどの余裕はない。



—コワイ…コワイヨ…ダレカ!



何かから逃れるようにがむしゃらに走っていく。

どこに行けばいいのかも分からずに、ひたすら…ひたすらに…


(どうしようっ・・・・このままじゃ・・・・!)





走り続けていくうちに、突然腕をつかまれた。



「・・・っ・・・ハァッ・・・やっと・・・つかまえたぞ・・・・ダイヤ国の姫・・・・・」



「・・・・・っ・・・!?」



見ると、やたら体格のいい男性が、少女を担ごうとしていた。

強い力でつかまれた腕は、ふりほどくこともできずに、暴れているだけしか出来ない。



「・・・っくそ!!大人しくしろっ!」



バチンッ!!



乾いた音が響いた—



「・・・・・・っ・・・・」



痛みをこらえて必死に反抗しようとするが、

幼い少女には相手にすることも出来ない力でおさえられていた…



「・・・・・しかたない・・・少し眠ってもらおうか・・・・・」



少女の顔に手が伸びていく—








—————逃・・・・げ・・・・ろ・・・・・・・





「・・・・っ・・・いやッ!」



——助けて!シャナ!ダイチ!



「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」



建物全体に響くほどの大きな声で、助けを求めながら、しゃがみこんだ。

瞬間、この幼い少女の体からとてつもなくまぶしい光が発せられた。





「・・・・・くっ!!何だ・・・この・・・光は!?」



光につつまれながら、必死に助けを求める・・・・・



そこに、一人の少年が光の中へ飛び込んだ。

否、飛び込んでいるのではない。その光の中へ、ひきよせられていたのだ——



少しずつ薄くなっていく光の中で、一人の少年が幼い少女に手を伸ばす——





「シュナッ・・・・!」



少女は、その少年の声に気づいて、必死に手をとろうとする。



「・・・・・ダイ・・・・チ!」



—ガシッ・・・





手を取り合った2人は、そのまま光につつまれ何も無かったように消えてしまった—————