ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 魔道ノ書 ( No.1 )
日時: 2010/10/02 21:33
名前: クラゲ (ID: sOJ/z1xg)

‐Prologue‐

 ——『クリスチャン・ローゼンクロイツ』。

 この名前を知る者は、世界中でもごく少数だろう。実際、『彼』についてはあまり情報がない。それでも、『ある者達』からすれば、偉大な人物となっている。それは崇拝と言っても過言ではない。

 何も知らない者が『彼』の名前を見ても、「何となく分かる」というのが大部分だろう。それほど一般の世間からすると、かなり程遠い存在なのだ。それもひとえに、『彼』が呼ばれていた名の所為でもあった。それは後世の今でもこう呼ばれ続けている。

 ——『クリスチャン・ローゼンクロイツ』は、『伝説の魔術師』であると。

 それは決して揶揄ではない。『彼』——『クリスチャン・ローゼンクロイツ』は文句の付けようもないほどの実力を兼ね備えた『魔術師』だった。それ『彼』が東方の賢者の一人から授かった、ある一冊の『魔道書』が起因している。

 それは『自然魔術』の奥義が記された『奥義書』でもあった。自然に存在する空気、水、日光、土——ありとあらゆる物を用いて発動する高位魔術の奥義が、その『魔道書』には事細かに記載されていた。

 ——魔道書《Mの書》。

 それが、伝説の魔術師『クリスチャン・ローゼンクロイツ』が後世に残した『魔道書』の名だった——。