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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 鬼紅葉 ( No.10 )
- 日時: 2010/12/09 07:01
- 名前: 桜音ルリ ◆sakura.bdc (ID: TWKNIdJ1)
六章
もう翔の傷は完全に回復してしまった。
でも、翔はなぜか此処を出ようとしない。
鎖はもう解けて焼けてくちはてたはずなのに。
それを翔に聞いたら、翔は優しい笑みを見せながら私にこういった。
「鬼紅を一人にできないだろ?」
ああ私が鎖なのか。
でも、私と違って翔には帰る場所がある。
だから私は……
私は立ち上がると台所に行って包丁を握った。
そして、まな板のうえに自分の腕を置くと、手首めがけて包丁をドン、と振り下ろした。
痛みがきて血が出るのが怖かったから、私は目をつぶった。
暫くたっても、地が噴出す様子はないし、痛みもこない。
恐る恐る目を開けると、そこには怒ったような顔の翔がいた。
「……なんで、こんなことしたの?」
ああなんでそんなに怒った声をだすの?
理由は簡単じゃない。
「翔に、飼われたかったから。」
怪訝そうな顔をする翔をよそに私はべらべらとしゃべりだす。
「だって翔はもういっちゃうんでしょう? だから、私は翔に飼われたい。そうすれば翔と離れなくてすむわ。だから……」
私はそこで一旦言葉を切ると、翔に微笑んだ。
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