ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 闇色のタキシード ( No.3 )
日時: 2010/10/25 18:50
名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: PlVnsLDl)

天界に戻ってから、白い石でできた椅子に座り、また人間界を眺める。
雲の上から見た人間界の夜は、窓からもれる電気は消え、一部の通りの明かりしか見えないので、その通りがとても目立つようになっていた。
———そういえば、あの女はどうなっただろう。
私の頭に、白いワンピースを着た黒髪の小娘が思い浮かぶ。
あの女は、無事に家に帰れたのだろうか?
そう思いながら、ゆっくりと目を閉じ、あの小娘の姿を思い浮かべる。
先ほどは私に注意をしてきたぐらいに元気であったが、今はどうだかわからない。もしかしたら、熊や野犬に襲われているかもな。
そもそも、あのような山奥で出歩いていた小娘が悪いのだろうがな。
私はあの女と初めて会ったばかりだし、私が心配する必要はないだろう。
私はそう思い直し、頭の中からあの女のことを追いだそうとした。

だが、どうも気になる。
あの女は私の信者でもないのに、何故気にする必要があろうか。
私はそう自分に言い聞かせるが、どうしたものか、あの女のことが頭から離れない。
何故、私はあの女のことを考えているのだろう。
あれも他人ではあるが、父上がつくったものであり、私が守るべきもの、人間だからか?

考えていても、答えは一向に見えてこない。
答えなど、もう、どうでもいい。
今は、あの女の安否が気になる。

とりあえず、明日、またあの山へ行ってみよう。
そしたら、あの女にまた会うかもしれないしな。
もしかしたら、あの女の残骸が見つかるかも知れぬが。

まぁ、あの女が無事に帰ったことを祈ろう。
神が願い事をするなど、また不思議なものだ。
私はそう思いながら、椅子の背もたれにもたれかかり、目を開け、曇った空を見つめていた。