ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 闇色のタキシード ( No.4 )
- 日時: 2010/10/26 20:18
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: wlOs4aVY)
今日も、昨晩のように人間界に来た。
昨晩と同じ葡萄の木の下で、葡萄の木にもたれかかって座り、足を思いきり伸ばす。
木の枝や葉の間から、太陽の光が差し込む。
木の枝と葉が風に揺れ、小さく音を立てる。
あぁ、とても、心地が良い。人間界も、それなりにいいものだな。私は静かに微笑みながら、青い空を見上げて、目を閉じる。
しばらく経つと、誰かがこちらへ歩いてくる音が聞こえてきた。
だんだん、足音が近づいてきて、突然止まった。
不思議に思い目を開けてみると、目の前には昨晩の、黒髪の女がいた。
女は私に気がついたようで、私が目を開けると、私の前にしゃがみこみ、話しかけてきた。
「貴方、昨晩この山にいた方ですか?」
「ああ。お前、熊に襲われずに帰れたのか?」
「えぇ。途中で少し道に迷ってしまいましたがね」
女はそう言って苦笑し、乾いた声で笑った。
私も小さく笑った。
何故だかは解らないが、この女が無事だと知っただけで、安心した。
何故だろうな。このようなことは、過去にもあまりなかったのに。
「あの、貴方、何処から来たんですか?」
「ギリシャだ。何故、突然そのようなことを聞く」
「貴方の髪と目の色がとても珍しいので。それ、元からなんですか?」
女の質問に、私は黙って頷いた。
私の髪と目は紫色で、後ろ髪はこのごろ切っていないので、長くなっていると思われる。
日本人から見たら、元からこの髪の色というのは珍しいだろう。
私はそう思いながら、自分の前髪を触ってみた。
「あの、貴方のお名前は?」
女が興味津々でそう聞いてきた。
私はやわらかく微笑み、女の問いに答えようとした。
だが、よく考えれば、私の本名を言うわけにはいかない。神の名を名乗るなど、頭がおかしいと思われるとしか思えんしな。
「ディオスだ。ディオス・カツィカス。お前の名は何と言う?」
私がとっさに思いついた名を名乗ると、女は笑った。
「私は月森 林檎と申します。この山の近くに住んでるんです」
女がそう言って、私に女の身の回りの事を話し出す。
私は頬杖をつきながら、それを聞いていた。