ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 闇色のタキシード ( No.7 )
- 日時: 2010/10/12 19:21
- 名前: クロウ ◆vBcX/EH4b2 (ID: 4Zx8dEzr)
林檎、か。
山で出会い、いつも話をする女の名前を思い出しながら、ため息をつく。
天界に帰ってきて、石でできた椅子に座り人間界の様子を見ながら、頭の中にある、もやもやとした、表現しにくい感情について考える。
何なんだろうな。この感情は。
あいつのことを妙に気にかけるようになるし。
しかも、あの山であいつと話すことも多くなった。
あれから一か月。毎日山に行って、あいつと話している。
あいつも私を見ると喜ぶし、悪い気はしない。悪い気はしないのだが。
何だろうな。これは。
あいつを心の奥で友として認めているから、か?
まぁ、そういうことにしておこう。考えていても時間の無駄だしな。
大神ゼウスの子の私が、人間と友になる、か。
今まで、人間と神の間に友情が芽生えた。という話は聞いたことがないがな。
神は人間の事情にはあまり手を出さないようにしているしな。
自分達の手で人間達の運命を変えてしまうのは、流石によくないと思っているんだろう。
私が人間、しかも日本人と関わりを持つのも、どうかと思うがな。
だが、ギリシャの神々は人間との付き合いも長いし、反論はしないだろう。
時には、女をさらっているしな。
私はあの女、いや、林檎に対してそのような事はしないようにしよう。
私はあの女を好いているようだし、あの女を傷つけてしまうと、自分も同じくらい、いや、それ以上に傷つくと思うからだ。
何の根拠もないが、そんな気がする。
実際、私があいつを傷つけたら、私はどうなるのだろうな。
まぁ、そのことは考えないようにしよう。
物事を嫌な方向に考えると、それから嫌な方向にしか考えられなくなるからな。
それより、今日も林檎に会いに行くとしよう。
そういえば、あいつは赤ワインが欲しいと言っていたな。
料理にでも使うのだろうか? それとも、父親にプレゼントするのだろうか?
とりあえず、今日はワインを持っていくとするか。