ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 予知少女 〜1〜 ( No.1 )
- 日時: 2010/10/03 10:21
- 名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)
第一章 荒廃する世界
誰のために生きるのだろう。何のために殺すのだろう。
なぜ人は奪い合うのだろう。なぜ世界は朽ちていくのだろう。
希望と再生という言葉は何を意味するのだろう。
終焉と崩壊はなぜ訪れるのだろう…。
ふと目覚めた時、温かい朝日が窓からさしていたら、どんなにいいだろうかと思う。
でも俺は朝日を知らない。温かさを感じたことはない。
冷え切っている手に、ぬくもりを感じたことも。
でもそれでいい。
この世界で生き延びるためには、欲をすてて、希望に背を向けていればいいのだ。哀れみなんて言葉も、俺はずっと前にどこかに捨ててきてしまった。
でも今はいらない。
哀れみがどんなに足手まといになるか知っているから。
だから俺は殺しも平気でやるし、盗みもやる。
生と死のはざ間のようなこの世界で、これは普通に起こることだ。大昔は人殺しや盗みを「犯罪」だなんていっていたらしいけど、今じゃどうだろうか。
人殺しや盗みは生きるための選択にすぎない。
今日も俺は頭のいかれた男を殺して、その金でこの世界では数少ない店で売っていた、湿ったパンをかじっていた。最近は収入が少ない。それに人も減ってきた。
それは仕方がないか。俺みたいな死神がうろちょろしてるからな。
そんなことを思いながら、ひょっこりと路地へ出ると、
「誰か助けて!娘を誘拐されたの!」
と半狂乱で叫んでいる女がいた。通りがかる奴等はいたが、そいつらは自分のことで頭がいっぱいなヤツばっかりだ。誰一人としてその女に興味をもつのはいなかった。
無論俺もその一人だ。自分のことで頭がいっぱいではないと思うが。
理由は、ただめんどくさいということ。その誘拐犯を追って殺されたりしたらくだらないし、それに今頃娘は殺されて、肉が食われているか、それか金目のものをとられているだろう。死者をバカみたいに追っかけて、何になるのか。
他人にたよるヤツは嫌いだ。俺は泣き叫ぶ女を尻目に事業所へと急いだ。
そこは事業所の跡であるだけで、事業所ではないのだが。
古びた建物の中に入ると、何人かの俺と同じような年頃の少年達が出迎えてくれた。
左からハンス、クロ、メルスタだ。俺は壁のはがれた廊下を歩きながらハンスに訊いた。
「ハンス。お前は今何歳なんだ」