ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 予知少女 〜2〜 ( No.2 )
- 日時: 2010/10/03 10:42
- 名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)
ハンスは昔強盗に左目をつぶされて、治療ができなかったから、目がただれてしまっている。だからハンスにはその目をボリボリとかいてしまうクセがついていた。彼は忌々しそうに左目をかきながら答えた。
「十四だと思う。アレクスが十五ならね」
「クロは?」
その名のとおり黒髪のクロは俺達の中で一番背が低い。
「十二だよ。僕は背も低いし年も一番下みたいだ。メルスタが十三だから」
クロが恨めしそうにいうと、メルスタはニタリと笑った。
そうしているうちに、奥についた。黒っぽい扉の前でハンスが大声を上げた。
「ティーン、アレクスです」
しばらくすると、奥から弱々しいティーンの声が聞こえた。
「ハンス、入れなさい」
中に入ると、俺達の親役をしてくれているティーンが椅子にすわっていた。
俺達は何年も前に親とやらを亡くしている。何度かの核戦争で。
ティーンは目を閉じていたが、俺が現れるとかすかに右目をあけて、優しげな声を出した。
「おお、アレクス。しばらくだったな。もう二ヶ月になるかな」
ティーンは今年で百十歳だ。俺の面倒をみてくれるようになったとき、すでに彼は百歳だった。
だから最近彼の記憶力はにぶくなってきている。
「三週間です。ティーン」
ティーンは微笑を浮かべた。
「そうか。まだそれくらいだったか。それで、急にお前を呼び出してすまなかった。
実は、昨日、ある少女がこの事業所に転がり込んできた」
俺は耳を疑った。
少女が?
たったひとりで?
この事業所に?
「少女はひどく傷をおっていての。とても怯えていた。わたしが治療をしてやったら、その少女が「アレクスはいませんか」と訊いてくるのだ。なぜアレクスを知っているんだと尋ねても、少女はそれ以上何も言おうとはせん。だから、お前を呼んだ。少女は隣室におるよ」
ハンスが隣室への扉をあごでしゃくった。クロも俺を見てうなずいている。
俺はティーンの横を通り過ぎ、扉を開けた。
後ろ手で扉を閉めるとかび臭い匂いが漂う小さな部屋が現れた。
その隅で縮こまるようにすわっていたのが、その少女だろうか。少女はあちこちに包帯をまいており、血が滲んでいた。
俺が立ち尽くしていると、少女はゆっくりと顔を上げて俺を見つめた。
そして、呟いた。
「アレクス?」