ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

予知少女 〜3〜 ( No.3 )
日時: 2010/10/04 21:05
名前: 紅薔薇 (ID: 4jdelmOD)

俺は答えなかった。うなずいただけだ。
見知らぬヤツ、しかも俺のことを知っているヤツなんかと口をきくのは性に合わない。
ただうなずいただけなのに、少女はそれを見て肩の緊張を解き、極度の安堵感を見せた。
「あなたが、アレクスなのね」

少女の様子を見たなら仕方がない。
五秒もたたぬうちに俺の中ではプライドより好奇心が勝ってしまっていた。

「お前は?」

少女はしばらく黙り込んでから、弱々しい微笑を浮かべた。

「レナ……」

「聞いたことないな」

「そうでしょうね。初めて会ったもの…」

俺はなぜか無性にイライラした。「じゃあ、なんでお前は俺の名前を知っているんだ」

俺が横目でにらみつけると、レナと名乗る少女は、黙りこくってうつむいてしまった。答えがかえってこないでので、部屋を出ようとしたまさにちょうどその時、レナが呟いた。

「あなたの……仲間だからよ…」

まるで消え入りそうなその声に、俺は思わず目を見張った。彼女は胸をおさえて苦しそうにしている。

「仲間?会ったこともないお前の?」

「…そう…」レナは誰かに聞かれてはまずいというように、声を押し殺しながらいった。

「そして、私と同じ使命をもっているの…」

全くわけがわからない。こんなおかしな女には出会ったことがない。
いきなり転がり込んできて、俺の仲間だとか、使命をもっているとか…。世の中にはこんないやがらせが流行っているのだろうか。俺はいぶかった。

「使命ってなんだ…」

「……………世界の、崩壊を止めるのよ」

                 



さびれた事業所の跡に、一風変わった少女が現れた。

いきなり傷を負って、転がり込んできたその少女はレナと名乗り、亜麻色の髪をもち、端整な顔立ちをしていた。
最初、俺やハンスたちはそいつを怪しがっていたが、やがて傷も治り、俺達に溶け込んでいくようになると、明るくハツラツとするようになり、笑顔を見せるようになった。

なんといっても、レナとティーンがとても仲良くなったのが印象的だった。最近、ティーンやハンス達とまともに会話したことがなかったのだが、レナが現れてからはよく談笑するようになった。

それくらい、レナは明るくて、俺でさえも一種の魅力を感じた。

雨上がりのある朝、俺が何気なく窓から首を出すと、下のコンクリートの階段でレナが灰色の空を』眺めていた。珍しくレナは静かだった。

俺が気になって階段へ行き、彼女のとなりに立つと、すぐに気付いて微笑を浮かべた