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Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.2 )
日時: 2010/10/04 06:41
名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)




           (あなたロシア人?)
「ねえ、大丈夫…?、вы русский?」


道端に、一人の男が倒れていた。
黒い髪に黄色い肌、東洋人の容姿をした男。厚く着込んだ衣服の上には
複数の血の染み…背中から何発もの銃弾を食らっていたようだった。


 (助けて……くれ)
「Помогите……」 息も絶え絶えになりながら、男が母親に気付いたのか、そううめき声を上げる。


 (一体何があったの?)
「Что с вами!?」


母親が男にそう聞くと、男は懐から 小さなアンプルを取り出し
震える腕を母親のほうへ伸ばす。血まみれになったそのアンプルの中には
少し緑がかった透き通った液体が満杯に入っていた。これは?と母親が首を傾げる。


「これを・・・・奴らに渡す訳にはいかない・・・匿ってくれ。」

奴らとは誰?と母親は聞こうとしたが、それをする間もなく
男は伝える事だけ伝え 頭をガクンと落とし雪面に突っ伏した。
出血多量で意識を失ったようだった。
恐怖のあまり、男の子が母親の服をぎゅっと掴む。
それを察したのか、母親は彼の頭をゆっくりと撫で「大丈夫よ。」となだめた。



「とにかく、彼を家まで運ばなきゃね・・・・・・」






パチパチ、と暖炉の火が爆ぜる音と共に
意識を失っていた男が再び目を覚ました。
気付けば彼は、ベットに横たわり 傷にも包帯が巻かれていた。


「大丈夫?一体何があったの?」

母親が、水とカーシャが乗ったプレートを男の枕元へ運ぼうとすると、
男はそれを「いらない」と手で遮った。


「貴方、名前は?」


「ハヤミ・・・・速水龍一郎。」

男は、途切れ途切れの声でそう答える。
それを聞くと、母親は 数m離れたところにあった机を指さしこう聞いた。

「あれは・・・・・何?」

指をさした先には、先ほどのカーシャが乗ったプレートの横に
一丁の拳銃。ロシア製のトカレフが置かれていた。
勿論、おもちゃやレプリカの類ではなく 実弾入りの本物だ。
勿論、それが拳銃であるという事は見れば誰にでもわかる。
彼女が聞いているのはむしろ、男が何者であるか?という事だった。
だが、男は頑なに答えようとはしなかった。
母親が 『ふうっ』と呆れたような溜息をつく。
どうやら日本人のようだけどこの男は、犯罪者か?何かに追われてるのか?
警察に突き出したほうがいいのか・・・・この謎の日本人をどうするかという
対応に思索を巡らせているその時だった。


家の外から、村人達の喧騒のような声が聞こえてきた。



「何かしら?」



母親が窓から外の様子をみると、
先ほどまで居た街道に、何やら人だかりが出来 村人の喧騒が聞こえてきた。