ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.3 )
- 日時: 2010/10/04 06:51
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
「どういうことだ!? 俺達は何もしていないぞ!!」
村の若者の一人が、目の前に立つ男達に抗議する。
だが、威勢の良い男も、体に複数の小銃を付きつけられれば
ハムスターのように頼りなく小さくなり、黙り込むことしか出来なかった。
「何度も言わせるな。この村に反政府分子が紛れ込んだのだ。」
「この村はこれより我々 ソビエト国家秘密警察が接収する。」
先頭に立っていた、背の高い士官がそう言う。
その冷徹な目とドスの聞いた声、そして『秘密警察』の肩書は最初は抵抗の意思を示していた村人達を一気に黙らせた。
この連中に逆らえば、反逆分子として粛清……良くてシベリア更迭は確実だからだ。
村人達の様子を 士官は、見下したように「フッ」と笑うと 後ろに居た部下達に対して大声で指示を飛ばした。
「総員、ガスマスク装着!」
「奴は、確実にこの村のどこかにいる!!徹底的に探し出せ!! 例の物を確実に回収しろ!」
その声と共に、銃を持った兵士達が村中に散っていく。
顔には、何故か物々しいガスマスクを装備し その姿が一層住民たちの恐怖を煽った。
兵士達は家を次々と回り、ドアを蹴破り、棚を荒らし、まるで強盗でも入ったかのように
家をめちゃくちゃに荒らしまわる。折角飾り付けたオーナメントや祭りの準備も
『捜査』の名の下に全てめちゃくちゃに破壊される。その光景を 村人達は
ただ黙って見ているしかなかった。
「畜生…クレムリン(ソ連議会)の狗め・・・・・」
村人の一人が、こう呟いた。
先ほどの威勢のよい若者だった。
彼としては誰にも聞こえてないほどの声量で言ったつもりだったのだろう。
だが、その呟きは不運なことに、先ほどの士官の耳に届いてしまった。
「貴様ッ!!今の発言は何事だッ!!」
士官は、若者のもとまで近づき 持っていた小銃の銃床で何度も若者を殴りつける。
そのリンチの光景すらも、村人はただ傍観するしかなかった。
≪こちら『チョールナヤ(黒)』、未だ目標を発見出来ず≫
≪こちら『クラースィバヤ(赤)』、次の家屋の捜索に入ります。≫
士官の無線に、色分けされた部下達の班からの連絡が次々と入ってくる。
彼らの押し入り強盗の捜索は村の隅々まで着々と浸透していた。
そこらじゅうで、家を荒らされた子供や女達のすすり泣きの声が聞こえる。
そして、捜索隊の一つが、とうとうハヤミの隠れている家の前にさしかかった—————————————
「酷い。何てことを・・・・・・」
母親は、恐怖や怒りのような様々な感情が入り混じった声を上げた。
ハヤミは、外で起こっている事が何かを既に完璧に把握しているようだった。
最初からこうなるであろうことは、彼自身にもなんとなく察しがついていたからだ。
「秘密警察だ!入るぞ!。」
とうとう、秘密警察が家の目の前に立ったその時だった。
ハヤミは覚悟を決め、起き上がり、コートを羽織り 『アンプル』を懐のポケットに仕舞い
最後に机の上に置いてあった拳銃を手に取り、それを家の扉のほうに向け 叫んだ。
「伏せろ!!」 その声を聞き、母親は思わず身を屈めた。
そう言うと共に、バンッバンッという音と共に拳銃から数発の銃弾が発射される。
飛んでいた銃弾は、ドアを突き破りその前に立っていた秘密警察の兵士の頭を同時に吹き飛ばした。
「ッ!!! 居たぞ!! 奴ッ・・ガッ!!』
撃たれた兵士と一緒に居たもう一人の兵士が、村中に響きわたるような声を上げ、知らせようとするが
続けざまに撃たれた銃弾で 彼自身も地面にキスをする事になった。
だが、消音機もつけずに放たれた銃声に 村中にいた兵士達がその存在に気付く。
「クソッ!!・・・・すまないッ!!!」
取り乱したハヤミは、近くに居たアリョーシャを捕まえ自らの体に引き寄せ
その頭に銃を突きつけた。 恐怖のあまり、アリョーシャが泣きだす。
「う・・・・ぇ・・・うぇぇぇぇぇっぇええええええええええええんん!!」
「ッ!! アンタ、待ちなさい!何をする気!!??」 母親が声を荒げるが
その言葉を遮るように、ハヤミが銃で母親を殴って気絶させた。
母親がバタンと床に大きな音を立てて倒れ込む。
もはやこの時点で、アリョーシャは自失状態となり、声すらも出せない状況になっていた。
「すまない・・・すまないすまないすまないすまない・・・・人類の為なんだ。」