ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.4 )
- 日時: 2010/10/04 07:00
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
ハヤミは、アリョーシャを人質に取ったまま 家を飛び出す。
家の周りには、既に秘密警察の兵士達が続々と集まりつつあった。
ハヤミは彼らに対して散発的に発砲を繰り返しながら
距離を取ろうとする。 彼らにとってその気になれば射殺は簡単な事だが、
相手は子供を人質にとっている。いくら残忍な秘密警察とは言え、兵士達としてもそれは
躊躇われたのだろう。だが、ゆっくりだが確実に 包囲網はハヤミを追い詰める。
そして、とうとうハヤミは 秘密警察の兵士達に四方を完全に包囲された。
完璧に互いが膠着状態の中で、秘密警察側から 背の高い士官がハヤミのほうに歩み寄る。
「大人しく投降して、例の物を渡せ。そうすれば罪を償うチャンスをやろう。」
士官をそう言って、手をクイクイと動かし 『差し出せ』という意思表示をする。
一方ハヤミは、銃の引き金に手をかけて頑なにそれを拒んだ。
「罪だと!? ふざけるな。これは人類が生み出した『負』の象徴だ。お前達がこれを使ったら人類がどうなることか…」
「これを始末する事が、僕ら研究者の責任だ。」
目が血走り、いつ引き金を引いてもおかしくないような状況だった。
士官はそれを冷静に流し、続けた。
「負の遺産?違うな。それは科学が生み出した有益な産物だよ。我々にとっては絶大な力となる。」
「さぁ、早くそれを渡せ。」
士官は、先ほどより一層語気を強めた。
緊迫状態は、張りつめた糸のようの頂点に達し 今にも破裂し切れる寸前のところまで来ていた。
だが、ハヤミはそれでも最後まで首を振り続けた。
「仕方ない」 そう言って士官は右手を宙に向けて挙げた。
その瞬間、ドン!!という拳銃より重い発砲音が 寒空の中に響き渡る。士官がひそませていた狙撃手の
銃弾によって、張り詰めていた糸は切られた。
それと共に、ハヤミの両足が千切れ、彼の体はそのまま地面に崩れ落ちた。
流れ出す血が真っ白な雪のスポンジに吸い込まれ雪面が深紅に染まっていった。
ハヤミは、薄れゆく意識の中で最後の力を振り絞り、懐にあったアンプルを手に握りしめた。
士官がそれに気付き、「やめろ!」と声を上げたが、遅かった。
「神は…人類にどういう罰を課すんだろうな……」
握力を込めて握りしめたアンプルは、パリンと音を立てて割れる。それはハヤミの命が砕ける音でもあった。
中に入っていた緑色の液体は、一瞬のうちに気化し大気中に紛れていった。
「クソッ!!……やりやがった!!! 『ウイルス』を流出させやがった!!」
そう叫んだ瞬間に、士官は苦しみだし突然地面にうずくまった。
鼻や、口から血が大量に溢れだす。
「が・・・・っ・・・『覚醒』しない・・・そうか・・神は、俺を選ばなかったということ・・・・・か。」
「総員に告ぐ、『プランB』発動だ。村人を全員始末し、この村を焼き払・・・・・う」
そう言い残し、士官も寒空の下に散った。
『ウイルス』の影響を受けなかった残された隊員達は、士官の命令を実行しようと動き出した。
だが、その中で兵士達の頭の片隅で 士官が残した奇妙な言葉がループした。
『覚醒』?——————————————————