ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.5 )
- 日時: 2010/10/04 06:46
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
村中で、同じような惨状が繰り広げられていた。
先ほどの士官と同じような症状が、多くの村人に発症していた。
ハヤミが流出させた『ウイルス』は、瞬時にして村中に広がり
多くの村人の命をものの数分で奪い去った。
「コイツは酷いな……」 ガスマスクをした兵士の一人がマスク越しに呟く。
プランB———ウイルスが流出した場合、感染を抑止する為に周辺の感染者を含めた全員を始末する。
そう出撃前のブリーフィングの時に説明されてはいたが…この惨状では、わざわざ俺達がそれをする必要はないな。
とその兵士は思った。それくらい、辺り一帯には死人の姿しかなかった。
そう思っていた矢先、一人うずくまっている生存者を見つけた。
一番最初に、こちらに対して反抗してきてリンチされたあの若者だった。
他の罹患者と同じように、鼻血を垂れ流し、うずくまっている。
コイツももうそう長くない、早く楽にしてやるか…兵士はそう判断し、彼に銃口を向けたその時だった。
兵士は、自らの腕が妙に熱くなっているのを感じた。
凍傷の兆候か?と最初は思ったが 違う……本当に『熱い』
「熱い・・・・うっ何だこりゃああああああああああああああああああああああああ!!!』
兵士は明らかに取り乱した、自分の持っているマシンガンが 熱でまるで飴細工のように
くにゃりと曲り、とろけ落ちる。それと同時に自分の腕から青白い炎が付き、それがみるみるうちに
全身に回っていく…ものの十秒としないうちに、その炎は兵士の体中に回り 彼の体を焼き尽くした。
しばらくして・・・青年の頭痛と出血は止まった。鼻血を拭いながら、青年は奇妙な感覚を感じていた。
自らの中に、今まで自覚できなかった力が芽生えた感覚。
現に、今自分を殺そうとした兵士は、謎の炎に包まれ灰塵に帰した。
「何なんだ…この力は…」
時を同じくして、別のところでも複数の悲鳴が上がっていた。
「何だ!! 何だこのガキ!!銃弾が効かない!!」
バババババババババッとマシンガンの乱射音が村に響き渡る。
銃口の先には、ハヤミに人質に取られた小さなアリョーシャが立っている。
だが、無数に飛んでいく銃弾は ただの一発も届かず まるでバリアのような
見えない壁に弾かれる。
「ママ…ママ…ママァァアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアァアァァ!!!!!」
『ウイルス』の流出で、母親を失ったアリョーシャは パニックに陥っていた。
その上で、謎の力に目覚め暴走する彼を止める事は誰にも出来なかった。
「ぐっぎゃああああああああ!!俺の腕がっあああああ!!!」
「ぐ・・・息がくる・・・・・」
発砲していた兵士達が、次々と『見えない力』の攻撃で、腕を折られたり、窒息したりしていく。
何の事情も話されていない兵士達にとってはまさに地獄のような状況だった。
村中の各所で、同じような光景が繰り広げられていた。
殆どの村人が発症後すぐに息絶えたが 『生き残った』何人かの村人は
皆 何らかの『能力』に目覚める。目覚めた『能力者』達は、
牙を向く秘密警察の兵士達を悉く蹴散らしていった。
そういった戦闘が、十分程続いたその時だった。
突然、上空で耳をつんざくような、キィィィイィィィィイィィィイィィィイィィィイィィィンという音が響き渡り
生き残った村人達も、秘密警察の兵士達も同様に空を見上げる。
上空には、複数のソ連の大型爆撃機が飛行しているのが見えた。
多くの者がそれに気付いた瞬間、爆撃機から、村へ向けて絨毯爆撃が敢行される。
ドドドドドオドドドッドオドドドドオドドドオドドドドオドドン!!ともはやこの世のものとは思えない
轟音と、地獄の業火が、小さな村の全てを飲み込み、家も、木々も、人も全てを砕き、焼き尽くした——————————。