ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: P.otencial〜異能のチカラ〜 ( No.6 )
- 日時: 2010/10/04 07:03
- 名前: ツェベリンスキー (ID: WWouN6/z)
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この一連の騒動は、後に『コルプチ村事件』と呼ばれソ連上層部の一部の者しか知らない隠匿事項として、歴史の闇に葬られた。コルプチ村は、地図から抹消され ソ連上には『存在しない』という事になった。
ハヤミをはじめとした研究員が開発した『ウイルス』も、全てクレムリンによって記録が抹消され後のペレストロイカ、情報開示、そしてソビエト連邦崩壊の流れの中でもこの情報が他国に漏れる事は決してなかった。コルプチ村で生まれた『能力者達』や、それを誘発する『ウイルス』も史実には一切記載がない。
奇しくもこの1977年。ソ連国内で、『ソ連風邪』と呼ばれる新型インフルエンザが爆発的猛威をふるい、
感染爆発はソ連国内に留まらず、欧州、北米、南米、ひいてはアジア全土にも広がり、多くの死者を出した。
だが、その死者の何%かが、『ソ連風邪』ではなく、拡散した例の『ウイルス』によるモノで
その過程で世界各地に多くの『能力者』が出現したことは教科書には記されていない、所謂『裏の歴史』となっている
時は流れ、30年後。
日本———————————————————————2009年。冬。東京都品川区。
「え〜という訳で、新型インフルエンザが昨今猛威をふるって・・・っておい、聞いてるのか浜見!」
日本中、どこにでもあるような教室の風景。どこにでもいるような高校2年生 浜見俊介は
喚き散らす担任の話を、頬杖を突き窓の外を見ながら右から左に流していた。
どうせ、保健通信の内容をそのまま読んでるだけだろう。
手洗い、うがい、マスクを着用しなさい。そんな当たり前な事、小学生のガキでも
わかるようなこと、いちいち言及してんじゃねぇよこのタコ。
と、心の中で浜見俊介は思っているわけだが 先生に逆らって
いちいち面倒事になるのもアレなので反論しないでいた。
そのうち先生も諦めるだろう……
と思った矢先、キーンコーンカーンコーンとHRの終わりを告げるチャイムが
鳴る。今日も今日とて退屈な学校が終わる。
「ハマミー、遊びに行こう!!」
後ろから、一人の女の声がした。
同級生で、幼馴染の柚木美香だった。
ハマミーというのは彼女がつけたあだ名だった。
「今日は金欠だし、皆でマックでも行こうぜ。」
「賛成ッ!!」
もう二人、中学時代からつるんでいる親友の結城幸太、須藤大樹の二人も居た。
基本的に、浜見は いつもこの4人と一緒になってそれなりに楽しい学校生活を送っている。
今日もいつもとかわらない、平凡な日々を過ごそうと思っていた。それが当たり前だと思っていた。
だが、運命とは数奇なモノで、そういう事を根底からぶち壊してくれるものらしい。
◆
「じゃあ、また明日〜」
ダラダラマック会が終了し、結城と須藤と分かれ
美香と二人でとぼとぼと歩きながら帰っている時だった。
「ねぇ、見て!飛行機雲!」
美香が、夕焼け空を指差しながらこちらを見つめる。
見上げると、確かに綺麗な飛行機雲が、夕焼けの空を横切って……
「…おい、あれ飛行機雲か?」
浜見は、その光景に奇妙な違和感を感じていた。
飛行機雲というよりあれは…隕石?いや違う。
「あれ、飛行機が墜落してるぞ!?」
確かに、飛行機が炎上しながら空中分解して落ちて行っている。
美香が「うそだ〜」と言っているその時だった。
ほんの数十m先で、ドゴンッ!という落下音がする。
どうやら、例の空中分解した飛行機の破片が落ちてきたようだった。
見に行ってみよう!好奇心の強い美香が速水の手を引き破片のほうへと走る。
落下した破片は、どうやら何かのコンテナの破片のようだった。
コンテナには、ロシア語の文字と思われる文字で何かが書かれている。
「読める…訳ないよね。ハマミー馬鹿だし。」
「こんなの普通の高校生ならだれでも読めねぇよ。」
美香の毒に対し浜見が突っ込みを入れる。
だが、一体何が入っていたコンテナなんだろうと浜見は気になった。
コンテナのサイズ自体はそこまで大きくないようだが…何かのパーツや、液体か何かだろうか?
だがその時は それが一体どんなモノなのかという事の検討すら彼にはつかなかった。
後になってわかったことだが、その飛行機は 意図的に東京上空で爆破されたこと。
そして、その飛行機の中には、ある『液体』が満載されていた。
その『液体』は、爆発の衝撃により、猛烈な勢いで気化し、東京を始め
神奈川、千葉、埼玉、栃木…関東一帯、そして日本中へと広がっていくのにそう時間はかからなかった。
そして、この事件が世界規模で動く大きな陰謀の最初の狼煙となるとは
この時の浜見達は知るよしもなかった。
その夜からだった。
彼の体に、異変が現れ始めたのは————————————————————————
第一話 完。