ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ヤミヤミさん ( No.28 )
- 日時: 2010/10/22 22:19
- 名前: 鏡花水月 (ID: 8hgpVngW)
私が壊れて四日目くらい。
家には毎日来夢が来る。
多分、こうなったのは三度目くらい。
一度目はパパの死ぬ間際の顔と胴体を見て。
どうしようもなく気持ち悪くなって、吐いた。
口の中が気持ち悪くて、全部吐き出すように、ずっと吐いてた。
二度目は侑士より前に『綺麗』な顔を見つけた時。
ま、侑士よりかは『綺麗』じゃなかったんだけど。
あまりにも『綺麗』で、思わず見るも無惨に殺しちゃって『綺麗』じゃなくなったのよね。
あれはただの肉の塊よ。
…ところで私は何故この話をしたのかしら。
……もうどうでもいいわ。
侑士はあの後家に帰ったらしい。
勿論、一人で。
来夢は着替えとか持ってきて三日三晩私の看病。
随分と痩せた気がする。
やあねえ。『綺麗』な顔が台無しじゃない。
「星火…。」
「何、何でも言ってごらん?」
「彼は君のたった一人の肉親だろう。」
「…そうだったわね。黒嵜は、彼の母親の旧姓だと聞いたわね。」
「…。」
「何が言いたいの。」
私は壊れた。
それは事実。
で、何が言いたいのか。
分からない。
一人で自問自答を繰り返す。
来夢の苦しそうに歪んだ顔を見ると、身体の奥が熱くなった。
身体の奥は熱いのに、身体は水をかけられたかのように冷たい。
私は、「生きたい」のか「死にたい」のか。それさえも分からなくなった。
「会いに行こう。謝ろう。もう彼に、関わらないであげよう。」
「彼は、私が見つけた人よ。奪うなんて許さないわ。」
「…。」
「何よ、もう……。出てって。顔は見たくないの。」
来夢は少し俯いてから、立ち上がって、出ていった。
一人だけの部屋に、寂しさが甦る。
ああ、この空気がいい。
やっと、呼吸が出来る。
誰かと会っている瞬間、私はいつも「死んでいる」。
だから、「生きれる」この瞬間は大好きだ。
少しして、ドアが開く。
「出てって、言わなかったかしら。」
「否、たださ、覚えてるかなって。裂夜さんの命日。」
「……。」
「やっぱ、忘れてた訳ね。ま、それだけ。」
そう行って出て行った。
溜息をつく。正直言って、パパには悪いけど行きたくも無い。
あと、三日後。
………あ、森の伐採計画が持ち上がっているんだったわね。移動させなきゃ。
「あぁ、まったく…」
言葉が頭に響く。
“逃ゲロ、星火…!”
窓が開いた!
「逃ゲロ」という言葉が連鎖して響いていく。
心は動こうとしてるのに、身体が動いてくれない。
逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!
「闇波星火……!」
出てきたのは、一つの腕と、一つの声色。
この声は、侑士……!?
「やあねえ。レディのお部屋に窓から入ってくるなんて、不謹慎にも程があるわよ。」
侑士は何処で支えているのか。
それさえも謎だったけど、構わず両腕を出してくる。
まさか、そう来るとは思わなかった…っ!
「来いっ!聞きたい事がある。」
「今から何でも聞いてやるわよっ!」
「家じゃないと駄目だっ!」
「五月蝿いわっ、離しなさいっ!……キャッ…!」
伸びてきた両腕に掴まれてそのまま二階から落下する。
私は不思議と痛くなかったけど。
まあ、侑士が私の下敷きになってる訳で。当然だけど。
「あ、早く行かなきゃね。」
「…は?」
「ね、侑士も手伝って。死体動かすの♪」
私は妖艶な笑みを浮かべ、侑士に抱きつく。
星火、これは秘密だよ。ある人以外にはね。
お父さんは好きな人と一つになったんだよ。