ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ——光と闇のAbility戦争——   オリキャラ募集中   ( No.113 )
日時: 2011/01/31 20:13
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: http://ameblo.jp/ff7-perfume-love-y

   Capter ⅡⅩ 小熊と少女

荒地に5人と一匹の影。
そのうち銀髪の男が肩を落とし、うなり始める。

「うぅ〜・・・。な〜、休まね〜?」
「黙って歩け」

ルーストの言葉に、獄が鋭い喝を入れる。
一旦は黙り込むルーストはそれでもなお、口を開く。

「腹減ったんだよ、俺は!」
「もうちょっとで森、着くから。もう少し辛抱してね」

聖花が汗を拭いてそういう。
確かに視線の先には久々の森が見えてきていた。
途中までは車で移動していたものの、その車も今では使い物にならなくなっていた(持ち主が怒って蹴ったが何もならなかった)。

「・・・はぁ。木の実とかあるといいけど」

彩佳がそうつぶやき、一向はそれを最後に沈黙を守った。
ひび割れた地面は水分を何も感じさせなかった。








涼しく静かな森に到着して、6人(くどいようだが正確には5人と1人———)は、丸太の上に並んで座る。
目の前には湖底が見えるほど透明な水をした湖。

「・・・小熊?」
「え、ホントだ!」

リィフの言葉に、腹をすかせたルーストが真っ先に顔を上げる。
ふたりの視線の先にはすこし丸い小熊がいた。
小熊は木の実を前足で持ち、洗っている。

「あれって小熊よりはアライグマなのでは・・・」
「どっちだっていい!捕まえて食えりゃーな!」
「・・・食べるの?」

彩佳がごろりと寝転がり、小熊——いや、アライグマを眺める。
アライグマは赤い木の実を水から上げると、濡れていない毛並みのところで磨く。
・・・が、取り落とした木の実が湖の中央のほうに流れてしまったためにがっくりとうなだれた。


「なんか可哀想」

聖花が言った瞬間、ふとアライグマが顔をあげてこっちを見る。
まるで不意打ちを食らったような顔で、後ずさる。
しかし彩佳はあることに気づく。

「ねぇ、あのアライグマ浮いてるわよ」
「青の蝶ネクタイ・・・してるし」
「な、な、な、ななな・・・」
「え、喋った!?」

全員に見つめられたアライグマは顔を引きつらせる。
リィフは熊の硬直しているところに歩いていき、むんずと掴みあげる。

「え、あ、う・・・。はっ、離してくれ〜〜〜っ!!」

その言葉に素直に従う。
アライグマは落下直前にかろうじて空中で停止する。

「危ないやん!なにやってんねん!」
「いや。離せって言ったの自分じゃん」

後ろから追って来ていた獄がつぶやく。
聖花は枝でアライグマの落とした木の実を手繰り寄せ、拾った。
森の奥の茂みが揺れる。
全員が身構える。

「い、いったたたた・・・」
「え!?」

茂みに不思議な形と模様の服のすそをひっかけられながら女の子が出てくる。
オレンジ色のカチューシャをした青い髪を絡まった枝から取り除くと、枝が外れた反動でこちらに飛び出してくる。

「あ、あれれ・・・?レイル、こんなところに。で、この人たちは?」
「憐架ぁ〜・・・。あ、ども」

喋るアライグマは聖花から木の実を受け取ると、嬉しそうにはしゃぐ。
女の子、憐架はレイルが足元に歩き寄ってきたあとに顔を上げる。

「レイル見つけてくれてありがとうね!私は憐架。んで、こっちがレイル。よろしくね♪」
「そーゆーこと!わいはレイル。憐架の保護者や。ウソじゃないで?ホンマや!」

レイルはあせったように頭をぽりぽりと掻いて小さな手で必死に訴えかける。
5人はひとりひとり自分の名前を名乗た。

「・・・あれ、そこの・・・。狼さん?は?」
『僕のことが見えるの?僕は天使のリベルだよ。でも普通の人間には僕の姿は見えないはず・・・』

レイルはきょとんとしてリベルを見つめる。
始まった戦争の中、こんな特別な人が普通に過ごしていられるわけはない。

『あれ、僕のこと知らないのかい?元:水の守護獣さん』
「ちゃうねん。知らんかったわけじゃないねん」


   Capter ⅡⅩ・・END・・