ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ——光と闇のAbility戦争—— オリキャラ募集中 ( No.130 )
- 日時: 2011/01/31 20:20
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
Capter 24 兄の仇
彩佳はところどころ怪我をしていたが、一番悪いのは肩だった。
肩のほうはかなり重傷で、右肩から腕の関節まで肉が大きく裂けている。
なんとかコートの切ったそでで応急処置として締めていたが、血はとめどなく溢れ出ていた。
「油断、したわ」
「後で私が、治療する・・・。私はもう平気だから休んでいて、彩佳」
最後の言葉は嘘だった。
ただ、彩佳に・・・仲間達に、自分のために無理はしてほしくなかった。
大剣を構えたリィフは、リドーアを睨みつける。
一方、睨まれたというのに当の本人のリドーアは楽しげに鼻で笑うと、応戦の構えを取った。
力と力の正面衝突が始まる。
「ほう」
二つに分かれた大剣を鮮やかに振るリィフの姿を見て、リドーアは短くそう言う。
黒いコートの袖で大剣の太刀を防ぐ。
硬い。
普通のコートじゃないのか?
しかし、そう考えているうちに大剣ごと弾かれる。
彩佳がリドーアを凝視していることに気づき、リィフは木の上に着地する。
「女・・・。何処かで会ったか?」
彩佳に——リィフではなく彩佳に、リドーアは言う。
話しかけられた彩佳はゆっくりと立ち上がる。
毛先のカールした髪の間から、ピアスがわずかな陽光に反射してきらめく。
「そのピアス、見たことがあるな・・・ああ、そうか。貴様、夜月 零弦の妹だな」
「・・・!!?」
口元を歪ませたリドーアはしだいに笑いを大きくし、ついには額に手の甲を当てて体を仰け反らせ、高らかに嘲笑する。
彩佳は憎しみに満ちた顔で、そんなリドーアを見ていた。
「ッハッハッハ・・・。フン、お前はあの意気地のない男の妹だったか。ククッ!あいつはな、自分が無力で力が及ばないために何も守れないと言っていた。最終的には自分の命と引き換えに、妹だけは助けてくれと許しをこいたんだ。奴は最後の瞬間まで弱者だった!」
再び、赤髪の悪魔は笑う。
ただただ、殺戮の狂気に笑う。
彩佳がピストルを撃つが、リドーアは無情にも腕で防ぐ。
その間も狂っているがごとく、笑っていた。
怒りが、憎しみが彩佳の戦いの意思を大きく膨れ上げさせていた。
「違う」
「ん?なんだ、俺の言ったことが間違いか?」
彩佳はそれには答えず、ただ気を集中させた。
探せ。
リドーアの、過去。弱点。
探れ。
ヴィジョン
するといきなり、彩佳の頭の中に映像が流れ込む。
幼い子供が——いや、まだ赤子と言ってもいい子供が、ゆりかごの中で静かに眠りについている。
隣にいる両親も眠りについていた。
しかし、それは赤子の眠りとは違う、「眠り」だった。
父の腹は何かが貫通したあとがある。
ただ倒れている父の背中の穴から、血に染まった赤いカーペットがやすやすと見える。
母は隣に、仰向けに眠っていた。
苦しげな顔のまま、第二子の入っていたのであろう膨れた腹に、腹と同じ穴の開いた手をおいた母が。
夜闇の中、赤子は殺されることなくゆりかごごともっていかれた。
赤子の家族を殺したのであろう、犯人の手によって。
Capter 24・・END・・