ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ——光と闇のAbility戦争—— ( No.38 )
- 日時: 2011/01/31 17:58
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
Capter Ⅳ 能力
未確認能力事件証明・解明務所 通称:未解———
その後、レイシーとルーストはずっと険悪だった。
いつもこうなのだが、今日はなぜか険悪さが増しに増していた。
レイシーの怒り方がいつもより強かった。
リベルはそれについて考えていた。どうもおかしい。
だってレイシーには心が無いのだから、「怒り」なんて感情を持つはずは無いのだ。
ルーストは入って右側の、勤務室と隣接している資料室で本棚の埃っぽいファイルの背表紙を睨みつけていた。
ここは勤務室とは違ってシャッターが窓に下ろされているため、明かりを付けないで彼は棒立ち状態になっている。
資料室、とは呼んではいるが、実際は今までの事件のデータの資料等が所狭しと棚に突っ込まれているのだ。
“部屋”より“ファイル置き場”や“データ置き場”のほうが、正しいかもしれない。
彼にも見えるはずの今のリベルが側へ寄っていっても、かまうどころか無反応だった。そう、まるで置物のように。
一方、レイシーはというと、ルーストとは反対方向の勤務室。
左の壁横の窓から一番離れていて、入り口に近い机の前に座っていた。
隣には聖花がいて、何かのハッキング作業をしていた。
彼女の指がキーボードの上を滑れば、画面に赤い暗号式が流れ出す。
大きな水色のリボンで栗色の髪を結わえて何かに熱心に集中している姿のその少女はとても愛らしい。
しかし、この少女がここに派遣されてきたときは驚いたものだ。
『上』から“天才”と呼ばれている女性を送ると言われ、『上』お気に入りのその『彼女』を出迎えに行った所——。
そこにいたのは、『彼女』よりも『少女』と呼んだほうがふさわしい7歳の彼女———焔光夜 聖花がいた。
10代にも満たないこんな少女を送り込んで何を考えているんだ、と思った未解だった。
その当時、ここの人々はその少女の姿をまじまじと見つめてしまったものだが、彼女は動じなかった。
それどころか、そんな大人たちをよそにレイシーの苦戦していたハッキングの画面を見て、
「ああ、このパターンね・・・。ちょっと貸してくださいね」
とか言って、さっさと解いてしまった。
こんな感じで彼女の半端無いその能力は証明されたわけだ。
しかしながらレイシーも未解の連中も、まだ彼女の右に出るハッキングの天才には出くわしたことも無い。
・・・そして、聖花にはもうひとつ、驚くべきことがあった。
彼女は、未解で調査すべき“能力者”の一人だったのだ。
その能力。それは不老不死———。
これは、聖花がレイシーのことを信用できると思ってくれた段階から自身が話してくれたことだった。
何世紀にも渡って、彼女は大昔から生きながらえてきた。
結果、聖花は色々な知識を身につけた。その知識は人の想像も超えるほどとても深く———。
本人曰く、普段20代位の姿で過ごしていたら、人身売買の人物リストに載せられたらしい。
その証拠に、よく追っ手に追われていたのだという。
だから、盲点であろう小さな子供の姿になっていた。
そしてもくろみは成功し、追っ手はぱったりと無くなったわけだ。
「・・・だから、わたしはレイシーよりもお姉さんなんですよ!?」
——なんてことも言っていた。
でも精神年齢は結構低いのか、かなり言動も子供らしいところが伺えることもある。
「・・・あ」
聖花の口から思わずこぼれたその一言とともに、彼女の使っていたパソコンからピロロという電子音が流れた。
キーワードの入力された画面は黒い背景と共に消え、今にも天使が舞降りてきそうな神秘的な空の画面に戻った。
そこにフォルダが開き、そこにはこの世界の、あらゆる人物のリストが載っていた。
Capter Ⅳ ・・END・・