ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —— Ability —— コメください! ( No.51 )
- 日時: 2011/01/31 18:12
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
Capter Ⅹ 恐怖
*Rinne Side*
乾いた耳障りな音とともにひとつの質素な白い扉が開く。
檻の中の彼女が目を開く。
目の前に立った女は、昼間の奴だ。
でも、何かが違う。
月光に照らされたソイツの瞳は、あの灰紫色ではなく———。
血のような紅と冷たく刺すような藍。
人の情なんて、知らない瞳だった。
こんな瞳を持つ奴、知らない。
見たことがない。
恐ろしく、でも『恐怖』という名の強い魅力を持つ瞳だった。
「リンネ・ルドレイル・・・。多くの人間を死に追いやったもの」
女の声が響く。
冷たく、闇に染まっているような声。
今までリンネは恐怖を知らなかった。
人を殺す恐怖。
つかまり、殺される恐怖。
死ぬかもしれない恐怖。
しかしソイツは感じたことのない強い恐怖を放っていた。
リンネの心が恐怖という冷たい手に捕まり、もがく。
助けてと叫びたい。
殺さないでと叫びたい。
初めて恐怖を知った。
自分の死・・・。
コワイ。
しかし女は、それを許さないほどの力の負の感情をまとっていた。
いきなり雨が降り出す。
雷の轟音がとどろく。
「もう、叫んでも誰にも聞こえない。この冷たい雨は恐怖をさえぎる。・・・罪を犯した人間は誰しもその償いをせねばならないのに、罪人は」
言葉をいったん切り、女は檻の前まで歩いてくる。
腰が抜けていることに気づき、手の力だけで壁際まで下がる。
その手も震えている。
手錠の重い鎖の音が雨音と雷の音だけのする部屋にむなしくこだまする。
それは、この女からは逃れられないことをあらわしているようだった。
「罪から逃げようとする。人は、そのために嘘をつく。真実は、無垢な子供から剥ぎ取られて消えてゆく。成長すれば真実は費える・・・」
檻しか間にない。
恐怖と隔ててくれるものは何もない。
女はオッドアイの両目を閉じる。
「それなのに、まだ成人と子供の中間のあなたはもうこんなに罪を背負っている。穢れを祓わねばならない。その前に、話してもらう」
女の瞳が開く。
檻に右手を当て、その手の甲に額を当てる。
「あなたをこういうことに巻き込んだ奴がいるでしょ・・・。それ、教えて欲しいんだけど?」
リンネは目を見開く。
女は驚愕したアタシを見て姿勢を戻す。
「話したら殺される!この目で、見たんだ!他のやつが消されるところを・・・!!!空間に消えて・・・っ!!」
「どちらにせよそうなるのよ。私に見つかった時点でね・・・。問題は、早いか遅いかなのよ」
「・・・・・っ!!」
*Rasee Side*
「・・・・・っ!!」
レイシーは、人を硬直させるオーラをまとうのが得意だった。
子供なんて容易なものだ。
もう、腰まで抜かしている。抵抗する力がないのもレイシーにはわかっていた。
「そいつの・・・。な、名前は・・・ッ」
「こまるなぁ。君からしゃべられちゃ。ま、どちらにしろ僕から名乗るけど?」
リンネが言いかけた瞬間に部屋の隅で突如、声がした。
二人と一匹(リンネには見えない)はいっせいにそっちを振り向く。
リンネはそこにいる人物を見た瞬間、声にならない悲鳴を上げる。
「とりあえず君には消えてもらう」
その人物はそういうと左手を差し出して、くっつけていた人差し指と親指をゆっくりと離した。まるで、何かを開くように。
レイシーはかすかに眉をひそめたが、その瞬間にリンネのいたほうから恐ろしい悲鳴が上がった。
「なっ・・・・・!?」
その光景は見るもおぞましいものだった。
リンネのよりかかっていた壁に赤黒い紫色の穴が開いていたのだ。
しかも、もっと恐ろしいことにその穴からは、青白い腕が伸びていた。
むき出しの部分は青白く、赤い血液にぬれたものだった。
やがて腕はリンネを恐ろしい力で引き込み、次元ごと消えた。
レイシーは気づかないうちに右手で指の節が白くなるほどに力を込めていた。
「さて・・・。邪魔者も消えたところで教えてあげようか。僕と君の関連性」
その人物は一歩前に踏み出す。
月光に照らされた彼の瞳は、オッドアイだった。
冷たく刺すような藍と、血のような紅。
ただ、左右は反対だった。似ているのに正反対。
彼の銀髪にも紫色のメッシュが入っていた。
Capter Ⅹ・・END・・