ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —— Ability —— コメください! ( No.54 )
- 日時: 2011/01/31 18:13
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
Capter ⅩⅠ 実名
恐ろしいリンネの悲鳴が、耳について離れない。
まだあの悲鳴は、尾を引いているようにレイシーの耳でこだましている感じだった。
後ろのリベルは毛を逆立て、明らかに警戒していた。
彼の表情は語っていた。
———こいつは、やばい。
「リベル。僕には逆らわないほうがいいよ。・・・と言っても逆らうこと自体、無駄だと思うけど。一応、君にも一時的に消えてもらう」
オッドアイの青年はリベルのほうに手を突き出し、パチンと指を鳴らす。
そるとリベルの立っていた地面に黒い穴が開き、彼は悲鳴をあげる間もなく消えた。
「はは、静かだね。ここには僕ら以外、誰もいない」
「・・・リベルをどこに消したの」
青年は楽しそうにさらさらの銀髪を揺らし、ふふっと笑った。
紫色のメッシュが月光を浴びて、きらめく。
まじめな顔よりもそのほうがレイシーにはさらに不気味に思えた。
メッシュのきらめき方も、自分のものと気味が悪いほど似ていたことに気づく。
「心配するのかい?やっぱり君は優しいね。・・・光の守護者ならあたりまえ、か。大丈夫、僕との短い話が終われば、自然に会えるよ」
「・・・光の守護者・・・?」
「そうだよ。僕は闇の守護者。僕のことどころか自分のことも覚えていないのかい?まぁそれもいつものことだよね。・・・ねぇ?リィフ」
最後の言葉を聞いて、レイシーは頭を抱える。
耐え難い頭痛がまるで波のように次々と襲ってくる。
思わずしゃがみこむ。
「苦しそうだね。楽にしてあげるよ。君の記憶全部、僕が引き出してあげよう」
青年はレイシーの前に来てしゃがみ、彼女の顔を覗き込んで不敵な笑みを浮かべると、そう言った。
レイシーは頭痛に何とか耐えようとしながら顔を上げる。
すると、青年はそのレイシーの額を左手で思い切り掴んだ。
「オラ タ シマミ ソウ シプニーシ」
その聞き慣れない言葉を発し、青年は手を離す。
するとレイシーの中で瞬間的に数多の記憶が鮮明によみがえり、押し寄せ、広がった。
数多の声と、顔と、風景と、生き物と・・・。
かつて義母だった女性の顔が頭の中にうかび、幸せそうな幼い自分の姿も寄り添っているのも浮かび上がってくる。
少し膨らんでいる義母の腹を二人でさすり、笑顔で歌を歌っている。
次の瞬間には深紅の血の色に染まった、変わり果てた義母のなきがらがさっきより少し成長した自分の前に横たわっている場面が浮かんだ。
横に、3歳くらいの少女のなきがらが無残に転がされている様子も伺えた。
レイシーは汗が頬を伝うのを感じた。
恐怖の象徴の汗だった。
Capter ⅩⅠ・・END・・