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Re: ——光と闇のAbility戦争—— ( No.55 )
日時: 2011/01/31 18:17
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)

   Capter ⅩⅡ 記憶

耳が痛くなる高音の後、誰かの声が頭の中で静かに響き渡る。

『リィフ。あなたは光の守護者。闇に世界が飲まれないようにする使命を背負うことになる。最も過酷なのは、あなた』
『はい。重々承知です』

自分のものと思われる声が、頭の中でこだまする。
暗い記憶。『視界』というもののない、『聴覚』だけの記憶だった。

『暴走を開始した“闇”を正せるのは、あなただけ。あの者に闇の力を授けた私は、なんとも愚かだった。頼んだわ、リィフ』

また耳の痛くなる音が響く。
場面が切り替わったようだった。

『どうして、その力を使うの!?とても残酷で、危険で、恐れるべき力を・・・!よりによって、その中の悪の力を引き出すなんて!』

自分の声が、誰かを問い詰めていた。
切羽詰ったように叫び、懇願し、嘆いているようだった。
とても今の自分とは思えないような、感情をむき出しにしたような口調だった。

『闇を恐れちゃいけない。悪も同じだよ。闇は真っ黒で、にごりがなくて、すばらしい。闇こそ全て。全ては闇なんだよ』
『そんな・・・。違う。誰にだって、光があるはずよ。あなた自身にだって・・・』

闇の中で、二つの声がぶつかりあう。
静かな空間に、ひと雫の音がした。

『ならそんなもの、いらないね。そうだ、交換しようよ。君の中に生まれる闇と、僕の中の光を』
『そんなことをしたら・・・!』
『僕ら以外のものは、消滅の危機に瀕するだろう。もちろん神や、水と炎の守護者も。すばらしいだろう?僕らで世界を破壊し、創造するんだ!』

暗がりは頭の中から消え、そこに場面がいくつも生まれては消え、生まれては消えた。
そこからレイシー ———リィフは、全てを理解する。

闇の守護者の力で世界は破滅しかけ(大昔に起きた氷河期と呼ばれるあのときだ)、自分はその手から逃れたくてこの世から何度も消えようとしたこと。

何度も消えかけられるのに、命ではなく精神が一時的に崩壊、そして記憶が飛んで発見されてまた逃げて・・・の繰り返しだったこと。

少しの間に掴んだ幸せも全て、毎度のように闇の守護者によって消されてきたこと。

「君の心は消えない。契約の代償にもならない。だから今の力は君の潜在的な能力で、心はそこにあるんだ。———君が知らず知らずのうちに自身で封じ込めようとしてたみたいだけどね」
「聖なる光の結晶・・・」

リィフは首から下げていたダイヤのネックレスを叩き割った。


その中で光は封じ込められていたのだ。





光は主の元へ返り、一体となった。


闇の守護者は、自分と対等に張り合える唯一の存在、光の守護者の復活に満足げに微笑んだ。

光が力を取り戻したことで闇の力と存在がより強く、濃くなって彼の髪にリィフのメッシュの色がうつり、全体的に銀の艶のある黒髪に変わる。

ずっと闇に閉ざされていた記憶は戻り、毒気が消えてゆく。
リィフの髪の毛色は、今や毒気が抜かれて金髪に近いハニーブロンドだった。

   Capter ⅩⅡ・・END・・