ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ——光と闇のAbility戦争—— ( No.58 )
- 日時: 2011/01/31 18:19
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
Capter ⅩⅢ 戦士
「闇を創造するもの、ブラン・クレアシオ。それが僕の名前。もう自分の名前だってどうでもいいけどね」
リィフの髪はストレートに変化していた。
その性でクセっ毛だったときよりも長く感じる髪を、不思議そうに手に取る。
まるで、生まれ変わったような感覚だった。
さっきまでは世界の何もかもどうでもよくて。
自覚はなかったのに、心のどこかでくすぶっていた光の守護者としての一部が自分を突き動かしていて。
「わたしの名前は・・・。光の使者、リィフ・アンジール・・・。どうして、こんなに記憶が消えてしまっていたのだろう」
つぶやきに、なぜかブランは悲しそうな笑顔を浮かべた。
明るんできた空の朝日が二人の顔を照らす。
リィフの髪は朝風と朝日でキラキラと輝いた。
「僕と手を組もうよ」
リィフは自分の髪から手を離し、ブランを見上げる。
そのまま、首をかしげる。
「僕と君二人でなら、この世界を支配できる」
「どうかな。支配に興味はないのよ。・・・でも、断ったらどうなるの?私は戦いたくないの。何人も痛めつけてきたから」
「そう?でも戦争だ。僕がこれから集める、僕の闇の力に忠誠を誓うAbility保持者と戦士達、君の光の力の元に集うAbility保持者と戦士達で」
リィフが閉じた瞳から一筋、涙が頬を伝い落ちる。
再び開いた瞳は、美しい灰紫に戻っていた。
決心したように彼を見つめる。
「今度は逃げない。ちゃんと、あなたを止める」
「意外だよ。また姿をくらますと思った。じゃあ、それは宣戦布告と受け止めていいんだね?・・・両者、保持者達がいい感じに集まったら僕から伝えてあげるよ。数日はここで仕事をやり遂げながら戦士を集めたらどう?この町数人、Ability保持者がいるから。ま、一人さっき消しちゃったけど、僕の元に呼び戻すとするか」
「わかったわ」
リィフが頷くと、ブランは隙のない笑顔で言い放った。
左手の人差し指をすっと出す。
「うん。じゃ、少しの間だけおやすみ」
ブランはリィフの額に人差し指をトン、と置いてはじく。
彼女はそのままスローモーションのようにゆっくりと後ろに倒れながら意識が消えてゆくのを感じていた。
そして、これから始まる世界の危機に対しての恐怖はなぜか感じていない自分に驚きもした。
声が、真っ白な頭の中に響く。
目覚めてしまったのね。
・・・誰?誰なの?
声は、私の質問にはあえて答えなかった。
過酷な試練なのよ。わかってる?
闇があるからこそ光がある。光があるからこそ闇が存在する。
あの子は、それを理解していない。
だけどあなたは今回あの子に向き合う。
どうか、今度こそあの子を正してあげて。
「———ィ・・・」
ほら、仲間が呼んでる。
早く。目覚めて、安心させてあげて。
そして忘れないで、私はあなたのすぐ側にいるから
まって!!
言いたいのに、声が出ない。
その代わりに耳が正常な感覚を取り戻しつつあった。
「・・・・・シー!レイシー!?聞こえる、ねぇ!?」
「・・・おはよ、彩香・・・」
戻ってきた。
これが、私の護るべき世界だ。
Capter ⅩⅢ・・END・・