ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —— Ability —— コメください! ( No.70 )
- 日時: 2011/01/31 18:24
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
Capter ⅩⅤ 告白
「・・・え?何言ってるの。レイシーはレイシーじゃない。何かあって、髪の色も変わったりしてるけどレイシーはレイシーでしょ?」
3人とも混乱した顔をしている。
それが普通の反応だ。
よく知っている人間に、いきなり「自分は自分じゃない」と言われて「ああ、そうだね」なんて反応はなかなかできない。
・・・というよりか、そんな反応をした奴はおかしい。
それは多分どこかが異常で、結果3人は正常なのだ。
「いきなりそんなことを言われても信じられるわけないことは良くわかってる。だから、聞いて。今までどおり、私を仲間だと思うなら」
リィフの言葉に3人は顔を見合わせる。
しかし、レイシーの真摯な瞳に打たれたのか、やがて小さく頷く。
「あたりまえですよ。いままでも、これからも仲間です」
「そうよ」
「ああ」
リィフは気持ちを落ち着けて話を始める。
長年感じたり伝えたりしなかった心がゆっくりと覚醒し始める。
リィフは仲間を信じて伝える。
まず、光と、闇と、炎と、水の守護者、そしてその総力を握る神のことを。
ブランのことを。
ブランの話をしている途中にリィフは少しあえいだ。
それは恐怖からなのか、また別のところから来るのかはわからなかった。
しかしルーストが驚いて駆け寄ろうとするのを制し、呼吸を落ち着けてまた話し始める。
次に、大昔から生きてきた自分のことを。
自分と彩香にしか見えないベイルのことも。
「ベイルのことは、ここまで話していて本当に心から私の話を信じていれば、すでに見えているはずよ。見えなくてもあせらなくていい」
「俺には見えるぜ。なんかにらまれてる気がするけど」
『にらんで何が悪い』
「うわ・・・。天使のクセに口悪りーな」
「いい勝負でしょう」
どうやら二人とも見えているようで、リィフはほっとする。
正直信じてくれなかったら少し怖かった。
そして最後に、この世界に危機が訪れていることも。
これにはみんなどよめく。
「!?闇の守護者が、光を飲み込もうって言うんですか!?」
「本人はそういってる。あれだけの力があるとやりかねないわ。今、この世は負の感情に満ちている。それはアイツにとって絶好の状態なのよ。それに、光を飲み込むというのならあいつにとって一番邪魔なのは—————私だと思う。あいつが侵略を始めた時点で一番初めに呑まれるのは私」
「ゆ、許せねぇ〜〜〜〜〜っ・・・」
「といことは、最終的に彼を止めることのできるのはレイ・・・ごめん、リィフだから、あなたが消されたらどうしようもないってことになるわ」
リィフは、驚いていた。
こんなにも信じられない話を信じてくれるということは、私は今までそこまで信頼されていたということなのだろうか。
気づかなかった自分は、確かに鈍いのだと思った。
心がなかったので無理もないのだが、本人は気づいていない。
・・・解説が遅れたが、何気にルーストの言葉はスルーされていた。
「それであいつは、Ability保持者達を闇と光の二つのどちらかにそれぞれつけさせて戦争しようとしてるの」
「そんなことをしたら・・・!」
「一般人は愚か、国や世界までもが戦争に飲み込まれてしまいますよ!?」
「もしくは、それも狙いなのかもしれないわ。光側ののAbility保持者、そして無力な一般の人間は消して闇一色に染める」
リィフは目を伏せてそう言う。
すると、獄の鬼ならではの大きな手が肩にぽん、とかかる。
「事情は良くわかりました。我々はAbility保持者達を裁いてきたのです、今更信じられないこともありません」
まぁ、確かにあなた自身鬼だしね、とリィフは心の中で笑う。
彩香は前からしゃべる、しかも他人には見えないリベルのことも見えていたし。
しかし一番大変なのはルーストだ。
彼には特別な力はない。
「それで、戦争には戦力が必要なの」
「「「力は貸す」」」
全員が、声をそろえてそういう。
リィフはここ何十年ぶりの笑顔をみんなに見せる。
すると、外で誰かがゴミ箱を蹴った、というより当たってしまったような「ゴトリ」という音がして「誰!?」と彩佳が指摘する。
ぼやけたガラス戸の奥で人影は揺らめき、走り出す。
「待って!」
リィフはとっさに白い病院服のままシーツを剥ぎ取り、はだしのまま走り出して人影を追って走り出した。
たったひとりで、少しばかりふらつきながら。
Capter ⅩⅤ・・END・・