ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: —— 光と闇のAbility戦争 ——    ( No.75 )
日時: 2011/01/31 18:25
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)

   Capter ⅩⅥ 裏切り

ペタ、ペト、ペタ・・・。

自分の走る足音が、人気のない寂しい街角に響く。
その音を聞いて、やっとリィフは自分がはだしのままだった音に気がついた。
しかし後の祭りだし、そんなものにかまっている暇はない。

人影が走る。

薄い空色の大きなリボンで高い位置にひとつで纏められた亜麻色の髪、白い日傘。
傘は強い日差しの下、涼しげな影を落としながら走る女性の振動と共に不規則に揺れ動く。

その傘を持つ手には、木の葉の金色と碧のグラデーションのブレスレット。
ロングスカートと同じ長さの、引き込まれそうな深い藍のコートはきらめき、まるで星空を象徴しているかのようだ。
ブーツの足音は建物に反響する。

その後姿に色々な違和感を感じながら、リィフは街灯の陰に隠れて様子を伺っていた。
女性は息を荒げたまま立ち止まる。
リィフはその機会を狙い、屋根や壁を使って女性の背後から消える。
そして、彼女の目の前に猫のごとく静かに降り立つ。

女性はさっきまでリィフのいた方を振り返り、ほっとしたように前を向いた。
そこにはもちろん、彼女の気に掛けていた人物がいた。

「どうして逃げるの?」

女性は後ずさりし、背を向けて走り出そうとした。
その女性の耳元で何かが光り、とっさにリィフは彼女の、傘を掴んでいたほうの腕をつかんでいた。


白い傘がその衝撃にゆっくりと落ちる。



今度はリィフが驚いて後ずさる番だった。

「せ、いか・・・!?」
「・・・・・っ!」

そこにいたのは、大人の姿をした聖花だったのだ。
彼女は、もう元に戻らないのだと言っていた。

ではあれは、嘘なの?

信頼されていると思っていたのに。

信用していたのに。

しかし、振り向いた聖花の瞳があまりにも悲しげで苦しげで、リィフは気づけば自分から掴んだ手をほどいていた。
かわりにただ、問う。

「聖花。どうして、あなたが・・・!?」
「ごめんなさい。わたしには、過去のときのような力はないから・・・。こうするしか、ないの」

聖花のこの後姿。
前にも見たことがあると思った。
あれは、リンネの事件のときだ。
思い返せば、もっと前から見ていた気がする。もっと前の事件に取り掛かっていたときから。

                                 あれ、ちょっと待って・・・?

もっと前から、知っている・・・?

「私はあなたを、知っていた・・・?もっと前から?」

聖花は苦しげに眉をひそめる。
しかし、ただくりかえしてつぶやいた。

「こうするしかないのよ。この世界を守るために。ブランと手を組んでいる、王城 幽鬼という男の力から守るために」
「王城・・・幽鬼??」
「そう。運命を握る、Ability保持者」

   Capter ⅩⅥ・・END・・