ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —— 光と闇のAbility戦争 —— ( No.96 )
- 日時: 2011/01/31 18:32
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
- 参照: http://ameblo.jp/ff7-perfume-love-y
Capter ⅩⅧ 犠牲
落ちる。
世界がスローモーションをかけられたようにゆっくりと動く。
車の動きもゆっくりと見え、タイヤの動きさえも目にみえるようだった。
しかし、実際には数秒の出来事のはずだ。
落ちる、そう思った瞬間、リィフはとっさに頭の中へ流れ込んできた呪文を唱えていた。
「フィサ テル ファー」
すると空中に投げ出されていたはずの体はそこで急停止する。
体が、宙に浮いている。
どうして!?どういうこと・・・?
リィフがそう思うのと同時に、後ろから迫ってきた車のバンパーへ着地する。
車内にいた男は驚き、右へ左へハンドルを切る。
しかしリィフは微動だにせず、男は横の壁に突っ込んだ。
もちろん、激突寸前のところでリィフはルーストの車の上に戻ってきている。
そして車の上で進行方向に体の向きを変える。
背後で爆音が響く。
*Ayaka Side*
どうやらあの男はザコだったらしい。
男のものらしき血に染まった車の破片が追うように吹き飛んでくるが、車ごとそれを巧みに避ける。
所詮、捨て駒というところか。
村の全貌はあらわになり、黒い煙のたなびくのもちらほらと見える。
赤い炎が大きく村の家々を飲み込んでゆく。
車はさらに、スピードを上げた。
「今、村に生き残っている人々はいるの・・・?」
村に到着した六人は絶望的な表情で辺りを見回し、家の中を確認しに行く。
彩香のつぶやきに、リベルは問う。
スベ
『・・・自分で確かめる術を、もう君は得ているはずだけど』
「え」
彩香は自分よりも少し低い獣のほうを振り返る。
自分で確かめる術・・・?
やっぱり、そうなのね。
彩香は“声”を探る。
“声”。それは生者のみ発することができる。
そしてそれを感知できるのは、潜在的にそれを聞く能力を持つもの。いわば、Ability能力者だけ。
私にはそれが聞こえた。
ということは—————。
私にも、Abilityが眠っていたという事か・・・。
生者たちよ。
声を聞かせて。
『お母さん、お母さん!やだ、やだよ・・・っ』
『もう出口がふさがってこっちは・・・!』
『誰か、誰か助けてくれぇっ』
色々な声が頭の中へ響く。
彩香は声のしたほうへ走る。
途中、仲間達を見つけては声をかけ、指示をとばす。
「こっちに二人、親子がまだ生きてるわ!」
「その家の中、炎に巻かれた柱の下に人がいる」
六人はなんとか炎の中をかいくぐり、数人を救命する。
しかし中にはもう手遅れで、黒く焼け焦げた死体と化しているものもいくつかあった。
初めに聞こえた女の子の声の主が泣きじゃくっている。
母親が箪笥の下敷きになって出ることができなくなってしまったのだった。
彩香が駆けつけたときにはもう、箪笥から出ていた上半身に炎を纏った屋根が落下してしまった後だった。
娘をひとり残して、すでに母親は炎の中へ消えていた。
犠牲者は、戦争が進むにつれもっと増えるのだろう。
Capter ⅩⅧ・・END・・