ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: egoism ! ( No.3 )
日時: 2010/10/10 13:48
名前: 或 ◆zyGOuemUCI (ID: hqWYiecP)

#01 ( 無様 )

「や、やめてくれ! 助けてくれよ!」
「……醜いなぁ、本当に」
 血が流れる右腕を左手で押さえながら、無様に命乞いをしている男に俺は冷たく吐き捨てた。
 よく見てみろよ。お前の後ろには壁。目の前にはお前に銃を向ける俺。お前の命が助かる可能性なんて一パーセントも無いだろうが。
 そう言おうとしたが、まあこれ以上話す意味もねぇし、第一面倒くさいからいいや。こいつの処理が終わったら任務完了。あそこに寄って報酬貰って家路につくだけ。さっさと終わらせて帰ろ。
「じゃ、ありがとさん」
 これは、いつも俺がとどめの引き金を引く時言うコトバ。なんかもう癖になって、無意識に口に出してしまう。まあこの"ありがとさん"は報酬への礼だけど。
 とりあえず左胸を狙って撃った銃弾は見事にヒットした。モロに当たったから即死だろ。
「任務完了」
 ──ああ、今日も紅い血が綺麗だねぇ。

 俺はとあるバーへと愛車を走らせた。報酬を受け取るために。……あーでも、なんか返り血とか浴びちゃったから着替えたいなぁ。べったりして気持ち悪いし血生臭いし。着替え置いてなかったけな。
 そんなことを考えてるうちにバーに到着。駐車場に愛車を止め、バーの入り口に駆けて行った。あ、入り口じゃねぇか。裏口だった。
 このバーも一応表向きは普通のバーとしてやってるから、一般の客も入るわけで。そんな中返り血浴びた男が「報酬くれ」なんて、我ながら怖すぎるだろ。なんの映画だよって。
「相変わらず汚いな、こっちは」
 入り口の方のドアは木で出来てて、なんか小さい窓みたいなヤツも上部に付いてて。おまけに開ける度音が鳴るベルまで掛けてあってすごい洒落てるのに、裏口は本当に汚い。下の方は犬の糞とか虫の死骸とかいっぱい落ちてる。上の方はカビてる。なんかもうとにかく汚いとしか言いようがない。
「ドアノブの錆くらい取れっつー話だよ」
 俺はため息をつきながらドアノブを回し、ドアを押した。……もうあいつら、来てんのかな。