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Re: 迷宮案内人-In the labyrinth ( No.12 )
日時: 2010/10/11 09:54
名前: 彩崎 (ID: FkTwM/pM)


case02 -樹の場合- 02


 翌日、突然事件は起こった。


「は?降格?父さんが?」
「そうなの、お父さんが仕事でミスしちゃって・・・」

「生活に困るほどじゃないけど、あんたの塾代、厳しくなってきちゃったの・・・」


 案内人がなんとかすると言ったのは、こういうことだったのか。

 父の降格。これはあまりいい結果とは言えないが、これでやっと塾から解放される。このまま高校受験をクリアすれば、晴れて楽しい高校生活が待っている!

 樹は母に、こう切り出した。


「なら、俺、塾やめるよ」
「一人で、ちゃんと勉強できるの?大丈夫?」

「ああ、任せとけって!絶対合格してみせるから!」


 もとの学力は低くない。これをキープできれば、大丈夫。それまで、めいっぱい遊んでしまえばいい、樹はそう思った。


* * *


 だが、それも長くは続かなかった。

 勉強はちゃんとするつもりだったが、一度遊び始めると、勉強なんてどうでもいいという気になってしまう。その間にも、どんどん前へ進む同級生。自分は前と変わらない。いや、変われないのだ。

 中学校生活、最後の中間テスト。樹はそこで、187人中115位という、今までではありえないような順位をとってしまったのだ。


「嘘だろ・・・!?」


 この結果を受けて、母にはヒステリックに怒られ、先生からは「もう東高は無理だ」とまで言われた。

 それでも、自分は大丈夫。自分だけはきっと大丈夫だと、心のどこかで思っていた。
 
 だが、自主的に勉強を始めても、思うように成績は上がらなかった。


「大丈夫、きっと・・・受かる」


 そんな希望も、儚く打ち砕かれた。


* * *

 
 東高の合格発表の日。

 樹の番号は——なかった。

「樹、どうするの・・・?お母さん、私立には行かせてあげられないよ・・・?」
「そんな・・・っ」

 樹は、そこでようやく、自分の家庭が金銭的に苦しい状況にあったことを思い出した。

 俺はこれからどうすればいいんだ。働く?どこで?夢の高校生活はどうなる?
 
 もうそんな生活が来ることなんて、ないと解っているのに。


* * *