ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 椿原小学校探偵部、始動【第3話執筆中】 ( No.100 )
- 日時: 2010/11/19 16:13
- 名前: 星都 ◆U9Gr/x.8rg (ID: PWqPGq9p)
「ただいまぁ〜。づがれだぁ〜」
時刻は7時15分。愛香のお母さんが帰ってきた。黒髪のショートカットを
かきむしりながら、ソファに倒れ込んだ。
「お帰りなさい」
「たいだま。あら、ソースの良い匂い。今日は焼きそば?」
お母さん——咲良(さくら)——は、愛香が作っている焼きそばの匂いをかぐと、
冷蔵庫の中からビールを持ってきた。
「良いの?飲んじゃって。呼び出しとか来ない?」
「へーきへーき。愛香を1人にしてるって言ったら、警部に『すぐに帰れ!!』って
怒鳴られたから」
話を聞きながら苦笑をすると、愛香は作りたてのソース焼きそばを
お皿に盛りつけた。
愛香のお母さん咲良は、椿原署の刑事で紅一点。
ちなみに探偵部の部室でかなたが言おうとしたのはこのことで、
愛香としては自分の母親が刑事と言うことで、周りにも迷惑がかかるのを
いやがっているために、なるべく人には言わないようにしているらしい。
「そういえばさぁ、青山佐那って言う人知ってる?」
「青山佐那?知ってるけど……どうかしたの?」
ぷはぁ、と口の周りに泡をつけながら、咲良は箸で焼きそばをつまみ上げた。
酔いが回ってきたのか、少し頬が赤い。
「今お母さんが担当している事件なんだけどね、実は誘拐されたの」
「へぇ。それでそれで?」
早口で言う咲良の前に、もう1本ビールの缶を置く。
酔いの勢いで話を聞き出そうとしているのだ。
「それでね、子どもが誘拐されたって言うのに、青山さんの旦那さん。まだ一度も帰ってきてないのよ。酷い話よねぇ」
「へぇ。まだ一度も帰ってきてないんだぁ。その家族、うまくいってないの?」
「家族中は良いらしいのよ。ご近所さんでも評判の家族らしいし。問題があるのは夫婦の金銭問題。
青山さんは専業主婦なんだけど、旦那さんがリストラされそうで……。そんな最中の誘拐でしょ?警部も子どもが居る身だから、今必死に犯人捕まえようとしてる」
「へぇ。警部さんも大変だねぇ」
適当に相づちを打つ愛香に、気をよくしたのか。咲良は身を乗り出して言った。
「でねでね、今警部が不審に思っているのは3人。1人は奥さんの妹。けっこうな遊び人らしく、お金に困ってるらしいのよ。
そして後の2人は旦那さんの弟さん夫婦。子どもは居なくて、実家暮らし。この夫婦も遊び人でさぁ」
どんどん話していく咲良に、圧倒されながらも愛香は聞き入っていた。
それと同時に、怖くもなっていた。お酒1つで事件内容を話してしまっている母親……。
明日無職になっていないことを願う愛香であった。
「んで、なんと旦那さんのお母さん。実はけっこうな資産家らしいのよ。
それ目当ての誘拐って警部は疑って居るみたいよ?」
それを言うと、咲良は机に突っ伏した格好で寝てしまった。
後に残ったのは、ビールの缶2本と綺麗に平らげられたお皿だけだった。