ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 椿原小学校探偵部、始動【第4話執筆中】 ( No.123 )
- 日時: 2010/12/03 13:18
- 名前: 星都 ◆U9Gr/x.8rg (ID: PWqPGq9p)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=15529
忠が出て行った後、誰からともなく溜息が出た。
そして常に冷静な秀二でさえも、言い淀んだ。
「……さて、今日はどうします?大沢さんの証言は…その……」
「役に立ってなかったしねー♪」
「そうそう。役に立って無い——って何を言わせるんですか!?」
「あや、正直に言っては可哀想ですわ。いくら本人が居ないとはいえ……」
「フォローになってないと思うぞ」
フォローになってない。それほど忠の情報は役に立っていなかった。
正直に言えば、それぐらいの情報は自分たちでもかき集められそうだ。
「……で?これからどうすんの?」
漫才同然の話をしている4人を無視すると、愛香は教壇に面白そうに寄りかかっている耶麻に聞いた。相変わらず机に突っ伏しているが、それはなるべく耶麻の顔を見たくないと言うのだろうか。
「んー?それは僕に行ってるのかな?」
「当たり前でしょ。あの4人じゃ役に立たない」
「はは、愛香は手厳しいなぁ」
いつも通りのさわやかな笑顔を睨む。
相変わらず不機嫌な顔は変わっていない。
「あんた顧問でしょ。ちゃんと指示すればいいじゃない」
「うーん。僕の教育方針って自尊心だからなぁ」
「あんたの教育概念なんて知らないわよ」
「知らないはないだろ?これでも教師だし」
「教師らしいところは一度も見たこと無いけどね」
そしてさわやかな笑顔VS 絶対零度の睨みの戦い。
無言ではあるものの、両者の顔の間には火花が散っている。
「……結局一番トラブルを起こしているのは愛香なんですよね」
その秀二のつぶやきは、2人の沈黙によって鎮圧された。
ようやく落ち着いたかなた達は、にらみ合っている2人を無視すると深呼吸をした。
「まぁあの2人はおいておこう」
「私たちも似たような感じだったけどねぇ」
「……ん。じゃあこの後のことについて話し合おう」
その言葉に、それぞれが深く頷く。
かなたは一冊のノートを取り出すと、今つかんでいる情報を書き出した。
————青山佐那誘拐事件————
<依頼人>
・大沢忠 4−2
<依頼内容>
・最近学校に来ていない女子の様子がおかしいため、調査をして欲しい。
先生によると、病欠と言うことになっているが、先生達の様子がおかしいため、
怪しく 思っている。
<詳細>
・子どもが誘拐されているのに、その父親はまだ一度も自宅に帰宅しては居ない。
・家族仲は良好。近所での評判も良いらしい。ただ夫婦の間に金銭問題有り。
・青山佐那の母親から通報があったのは3日前。
・下校時刻の4時を過ぎても、全く帰ってこなかったため、警察に通報。
・奥さんは専業主婦。旦那さんはサラリーマンだがリストラされそうになっている。
<疑われている人物>
・奥さんの妹。結構な遊び人で、お金にも困っている。
・旦那さんの弟夫婦。子どもは居なくて、実家暮らし。遊び人。
「ふぅ。こんなもんかな」
手の持っていた鉛筆を放り出すと、かなたは指の関節をポキッと鳴らした。
結構な時間同じ体制で居たらしく、肩をゆっくりと揉みほぐす。
「とりあえず、今のところこの情報しか無い。まぁ素人が集めた情報にしては、
集まりすぎな方だけどな」
「頑張ったから良いじゃん」
「あやは何もしていませんわ」
かなたが書いた情報をのぞき込むと、愛香は腕を組んだ。
そしてゆっくりと目を瞑る。
「……愛香?どうした、気分でも悪いのか?」
「煩い。ちょっと黙ってて」
心配そうな声で言うかなたを一言で黙らせる。心配してやったのに、と言いたげなかなただが、愛香は意味もなしに行動を起こすことは無いと言うことを、知っている。
周りの部員達はそんな愛香の様子を心配そうに見つめている。話し合いの途中で黙ったことはあったが、これほどまで真剣に沈黙を続ける愛香は見たことがない。
そんな中で1人だけ面白そうに微笑んでいる人物が居た。
——罪木耶麻だ。
「……久しぶりだね、愛香のこの姿」
誰にも聞こえないようにつぶやくと、耶麻はくくっとのどを鳴らした。
「いよいよクライマックス…かな?」
そのつぶやきは、誰の耳にも届かなかった。