ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 椿原小学校探偵部、始動【いつの間にか参照700突破!?】 ( No.143 )
- 日時: 2011/03/28 20:44
- 名前: 星都 ◆U9Gr/x.8rg (ID: p81XYxhw)
あたりは夕闇に染まってきた。時刻は午後6時半。
すでに子ども達が遊んでいる声は聞こえない。静けさが立ちこめる。そんな中で、美和はタコ公園のベンチに座っていた。
つい10分前のことだ。しばらく電話がなかった夫から電話がかかってきた。
警察には夫ですから、と言うと幸い逆探知されなくてすんだ。そして、なるべく声を荒げないように、慎重に会話をする。
「もしもし、あなた?今どこにいるの?」
『タコ公園だ…。すぐに来てくれ、話がある』
「夕飯のおかず?分かったわ、すぐに買ってくる」
妙に話がかみ合っていない会話を終わらせると、美和は愛想笑いを浮かべて「スーパーに出かけてきます」と言って家をでた。
————遅い。
タコ公園にいると言っておきながら、ずいぶんと待たせる。
美和は苛立たしそうに貧乏揺すりを始めた。すると、林の影から夫の声がした。
「美和」
「あなた…。そこにいないで、早くこっちに来て」
警察の前でなよなよと泣き崩れていた姿とは一変し、はっきりと言った。
顔は鬼の形相、否、般若のお面のようだ。
「わ、悪い…」
「あんた、きちんと佐那にご飯食べさせてるんでしょうね」
「も、もちろんだ」
一方夫の紀夫はとてもおどおどしていて、額に脂汗もかいていた。
「まったく…。私たちがリスク犯してまで、あんたババアの金をとってやるんだ。
少しはもっとしゃきっとしたらどう?」
「す、すまん…」
「で?弟夫婦どうしてるんだい」
「佐那と遊んでいる。幸い、佐那には気づかれてない」
気づかれちゃ困るんだよ、と毒づく。美和はポケットから煙草を取り出した。
————そのとき。
「そこまでだ!!」
「っ!?な、なんだいこれ!!」
美和と紀夫を警察が取り囲んでいた。
そして、探偵部と耶麻が一歩前に出る。
「あなたたちは自分の娘を誘拐して、青山紀夫さんの母親からお金を取ろうとした」
「でも、それだけではあなたは疑われてしまう。だからあなたはお金に困っている弟夫婦と妹を誘った」
かなたの後に秀二が続ける。あたりはいつの間にか真っ暗闇に閉ざされていた。
「その前にあなたは自分たちの疑いの目を避けるように、不審者を装ったんです。
そうすることで、疑いの目を避けて、被害者の家族になれた」
「だから、不審者が目撃されたんだよ。今時、絵に描いたような不審者なんてそうそう居ないもん」
女子組が後を続く。
今時絵に描いたような不審者。あんな黒ずくめの男が居るだろうか。
居たらきっとそれは、漫画の中か小説の中だけだろう。
そして、最後に愛香が続ける。
「そして旦那さんはあなたに電話を掛けた。携帯会社に協力してもらい、携帯のGPSを見させてもらいました」
後は警察の仕事です。そう言うと、愛香達探偵部の初仕事は終わった。