ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 椿原小学校探偵部、始動【第3話執筆中】 ( No.96 )
- 日時: 2010/11/19 15:15
- 名前: 星都 ◆U9Gr/x.8rg (ID: PWqPGq9p)
——愛香宅——
「ただいま……」
椿原小学校から歩いて10分のところ。白い壁が特徴的な家に帰ると、愛香はすぐさま二回にある自分の部屋に入った。
部屋は東側にあり、ベランダを出ると隣のかなたの部屋が見える。
愛香はベランダに出ると、外の空気を思いっきり吸った。かなたの部屋を見ると、まだ帰ってきていないようだ。おそらく今日発売の小説でも買いに行っているのだろ。誰も居ない部屋を見て、ふっと笑うと、愛香は一冊の手帳を手にとってリビングに降りていった。
『探偵の心得』
革の表紙を開けると、1ページ目にそう書いてあった。
「懐かしいな……」
無意識のうちに声に出すと、台所からホットココアを持ってきた。
愛香の両親は共働きで、まだ帰ってきていない。父親は8時頃。母親は7時頃に帰ってくるため、夕飯は自分で作っている。愛香の完璧な姿は、おそらくこの家の状況にあるのだろう。
テレビの前のソファに座ると、その手帳を眺めた。
〜6歳の頃〜
『やまさ〜ん』
『ん?なんだい?』
『そのてちょうはな〜に?』
今から5年前のお正月。耶麻の家に新年の挨拶に来ていたかなたと愛香は、15歳の耶麻が常に持っている手帳に興味を示していた。
前に一度聞いたことがあったのだが、そのときは耶麻にさりげなく話をかわされたのだ。そのときはかなたは興味を薄れさせ、特に気にも留めていなかったのだが、好奇心旺盛な愛香は気になっていたようだ。
『この手帳?知りたいのか?』
『うん!やまさんいつも持ってるから』
愛くるしい笑顔でいう愛香を膝に乗せると、耶麻は優しい笑顔で言った。
『これは探偵の心得が書いてあるんだ』
『たんていのこころえ?』
まだ6歳の幼い舌足らずな愛香には、まだ難しい言葉らしく、たどたどしく繰り返した。そう、と頷くと耶麻は手帳の1ページを愛香に見せる。難しい漢字で書いてあり、愛香は首をひねった。
『僕を必要としてくれる人が残してくれた、大切な手帳』
『??』
言葉の意味が分からないらしく、また首をかしげた愛香だが、しばらくすると顔をほころばせた。
『やまさんの、たいせつなひとからもらったたいせつなものなんだね』
その言葉に、耶麻はしばらくきょとんとしていたが、自分の出した答えに満足している様子の愛香の頭を撫でた。
『そうだね。それじゃあこれを愛香にあげよう。いつか愛香が探偵になったとき、きっと役に立つよ』
『うん!』
手帳をくれるというより、頭を撫でてもらった事に対して嬉しいらしく、愛香は満面の笑みで頷いたのだった。