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Re: 飴玉、夢現 ( No.4 )
日時: 2010/10/13 17:09
名前: 御伽噺 (ID: 8hgpVngW)

俺と美羽の出会いは、俺の母親である菜乃葉が亡くなって一年後の秋。
俺が4歳で、美羽が1歳。

「この人が、お前の新しいお母さんだぞ。架流さんだ。」

「宜しくね、瑠羽君。」

嫌らしく弧を描く唇に吐き気を覚えた。


それから4年後の冬。俺が9歳で、美羽が5歳。
義母も父親もろくに仕事をしなくて、よく幼い俺等を放っておいて旅行へ行っていた。
美羽はまだ5歳だから、母親に置いて行かれてずっと泣いていた。
その時、嫌なタイミングで帰ってきた。誰がって、義母達が。

「妹を泣かしちゃだめでしょう。」

決まってそう言うのだった。
死んでしまえ。心の底からそう思った。
泣かせたのは貴女の所為なのに、何故、何故。
目の前が灰色から、黒色に変わった気がした。
怒られた後、部屋に入る前に美羽が俺を呼び止める。

「…あめ…舐める。元気出るよ。」

そう言って小さい四角の飴玉を、俺に差し出すのだ。
二つを同時に舐めると、酸っぱい、柑橘系の味がした。
…レモンと、オレンジ。
変な口調の奴で、ちょっとオカシイけど。
微笑むのだ、俺に向かって。

その時の笑顔は、今も俺の脳裏にこびり付いて、離れずにいる。