ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 飴玉、夢現 ( No.9 )
- 日時: 2010/10/15 17:46
- 名前: 御伽噺 (ID: 8hgpVngW)
無事にテストも惨敗し、家に帰った訳ですが、
何なんですか、コレは。
部屋が荒れていて、服も、食器も散乱している。
…こんな事するのは……二人くらいしか居ないけど…。
「美羽…か、笙悟…か。」
美羽が発狂してしまった可能性も十分に有り得る。癇に障る事があったら容赦なく人に危害を加えるし。
まぁ、笙悟は美羽が嫌いで、愛してるからね。逆にさ、殺しちゃう事も有り得る訳ですよ。
俺は携帯を取り出し電話をかける。
発信先は『笙悟 自宅』。
「あ、もしもし。其方に美羽がお邪魔してないでしょうか?」
『……何で分かっちゃうかな。』
「とりあえず…待ってろよ。」
俺は走り出す。怒りに溢れた瞳を揺らしながら。
走る。
***
荒い息を整え、インターホンを鳴らす。
「笙悟、出てこいよ。」
『…ちょ…離せってっ…あ、瑠羽?開いてるよ。』
ドアに手をかけると、簡単に開いた。
廊下を進んでいくと、徐々にどす黒い液体が増えていく。
廊下を妖しく濡らす液体を避けながらリビングのドアを開ける。
そこで見たのは———
美羽の上に覆いかぶさってナイフを美羽の顔に近づけているような、影だった。
俺は頭の上から冷水をかけられたように背筋がビクッとした。
「笙悟…離れろ…。」
「あ、瑠羽♪」
笙悟が美羽から離れて俺の方へ歩み寄る。
「いい…いい。ほんとサイコーじゃん、人間って。」
笙悟は大きく手を広げる。
「人間はっ、全ての物事に色めき立ち、歓喜する!!それが絶望の色に変わりっ歪む!!
なのにっコイツには何も無い!!ホラ、瑠羽は今怒っている!!俺に怒りの感情を向けている!!
コイツはどうだ!?俺がナイフを向けても微動だにしなかった!!
コイツには…心が無い!!…実に面白い!!…あがっ。」
口より先に手が出てしまった。
心外だ。美羽に心が無い?笑わせるな。むしろ、俺よりも感情はある。
「俺は——人間を——殺したいほど愛してるっっ!!」
「…くだらない。人間。みぃ、人間。」
「俺はお前が嫌いだっ!!と、同時に愛している!!」
美羽との会話が成立してない。
あー、駄目だな。
「壊したいっ、壊したい壊したい…」「俺が許しませんよ。」
笙悟と美羽が振り向く。
俺は、微笑んだ。
「兄として、許しません。」
美羽は立ち上がって笙悟の背中を叩く。多分、思いっ切り。
笙悟は顔を歪める。
「ばか、」
「…そう、俺はバカ。」
「……笙悟は一番星のようですね。」
「るー、意味分かんない。」
美羽は首を傾げ、俺に言う。
俺は美羽を見て、微笑む。
「一番星ってある意味孤独ですよね。あんなに光り輝いているんですから、妬まれているに、違いありません。」
「…さっすが、瑠羽。的確ぅ〜♪」
笙悟は「ひゅ〜♪」を口笛を鳴らしながら俺を見ている。
その瞳は暗く、弱く、光を失っているように見えた。
歪んでいる顔で、無理矢理笑っている。
「やだ、瑠羽。そんな目で見ないでよぉ〜。」
「笙悟。顔引きつってますけど。」
「えっ!?いや〜ん、見ないで〜♪」
そう言ってポケットの中をガサゴソ探る。
「あ、あった。」と力の無い声で言う。
「はい。笙悟ちゃんから瑠羽お坊ちゃまに向けての餞別デ〜ス。」
「ねー、ふざける、大概にして。」
「うっせ———…。」
餞別、と言って出したのはスタンガン。
「それさ、特別なルートで手に入れた特注スタンガーン、バチチッ。最大出力で人殺せちゃうよ☆」
子供みたいな言い方で黒い事をさらっと説明する。
「…?」
「引くなってぇ——。これで人を殺しちゃって下サイ☆」
「無理。瑠羽、殺さないよ。」
「え———、うっそだぁ♪ねぇ、殺人犯。…の息子サン♪」
心臓を打ち抜かれた天使は、飛べない。
「違います。それは、俺ではありません。それは———俺の義母じゃないですか。」
では、
心を持って行かれた天使は、悪魔?