ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 蒼天のヘキレキっ! ( No.2 )
日時: 2010/10/28 00:06
名前: 遮犬 (ID: cLZL9WsW)

俺が早瀬 渚と出会ったのはほんの少し前である。

出会いは突然というと聞こえはいいかもしれないが俺にとっては残念の二文字だった。


「あっちぃ〜…」

真っ白な外壁に覆われ、ところどころ鉄のような物質で出来ている建物。
いわば世で言う学校という場所、建物である。


ただ、ここは普通の学校ではない。


今、世界はテロ組織や暗躍組織による活動がひどく、世界は恐怖に脅かされていた。
そこで学校を要塞とし、作り上げたもの。それは学生の身分を持ちながらも戦闘を行えるもの。
この桜ノ学園は世界と敵対する組織を壊滅させるために作られたものである。

その屋上にて、嘆く少年二人はいた。

手でパタパタと暑そうに汗の吹き出ている顔を仰ぎながら大きな手の届きそうで届かない蒼い空を見た。

「なあ、よう。お前…本当に大丈夫なのか?」

もう一人の少年が青空を見つめる少年へと話しかける。
地べたに座り、しんどそうにうな垂れている。手の傍には牛乳パックがおいてある。

「…何が?」

陽と呼ばれた少年は青空から目を離すことなく、言葉を返した。

「…いんや、なんでもねぇ」

頭を掻き、牛乳パックを手に取る。

たかし。何が言いたいのかはよくわかるよ。でも俺は…納得したいんだよ」

ようやく陽は青空から目を背け、孝と呼んだ少年に顔を向ける。
牛乳パックを飲み干しながら孝は怪訝な顔をする。

「…お前が決めたならいいけどな、後悔はすんなよ?」

孝は牛乳パックを陽に渡そうとする。これは飲めということなのだろうか。

「いらねぇよ」片手で牛乳パックを追い払う。

「いや、入ってねぇよ」当たり前のような顔をして孝は言った。

「お前な…」

捨てろということなのだろう。しょうがなく手でパックを取り、近くにあったゴミ箱へと投げ捨てる。
"後悔だけはするなよ?"この言葉がやけに重く、陽の心に響いていた。


——もう、あんな思いはしたくはない。だけど、納得が出来ない。


陽は己の拳をきつく握り締め、もう一度青空を眺める。

「…確かめないと…気が気じゃないさ」陽はそう呟いた後、大きく背伸びをした時だった。

「第二学年。ただちに教室へと戻りなさい。繰り返す——」

屋上にも設置されているメガホンから呼び出しの声がかかる。

「おっ、ようやくパートナーの発表ようだな! いこうぜ、陽!」

「あぁ」と、一言返事して孝の後をついていった。


教室へ入ると、ほぼみんな集まっており、教師らしき細い体質の男は名簿を持ち、無表情である。

「…集まったようだな。では、発表する」

懐かしい。陽は思った。ここで、"アイツ"と出会ったのだと。


今は亡き、一年前のパートナーと出会った日を。


「——陽。新見 陽!(にいみ よう)」

「ッ! あ、はいっ!」

いつの間にか名前を呼ばれていることに気付き、急いで返事をする。
クラスメイトといえる者たちの視線が陽へと集まる。気恥ずかしく感じたが気にしないでおいた。

「…早瀬 渚!」

教師らしき男がもう一人の名を呼ぶ。
返事もせず、ただ立ち上がったのは、少女。
肩までの全体的な黒髪に真ん中のほうに長い黒髪を束ねている長さの違う二つの髪形を分けている少女。

その姿は綺麗で、どこか懐かしく感じさせられた。

「えー、お前たち二人が組め。今日からお互いがパートナーだ、以上」

その綺麗さに言葉を失われていたが、次の言葉で一変することになる。


「ちょっと待って! 私がコイツと?」

綺麗だと思ったなんて前言撤回しようとこの辺りから思った。

「…あぁ、そうだが?」教師らしき男は何一つ表情を変えないで言った。

「冗談じゃないわよっ!」

見た目は美少女な黒髪少女が文句を言ってきた。いやいや、わけがわからない。

「こんなどうしようもなさそうなやつとペアだなんて信じられないっ!」

どうしようもなくて悪かったな!本人が目の前にいながら言うなんてものすごいやつだとは思った。
孝がさっきから腹を抱えて笑いを堪えている。…よし、これが終わったらアイツをぶん殴ることにしよう

「決定事項だ」教師らしき男は静かに告げた。

黒髪少女はその後も何か言っていたが特に変化することもなく、終了となった。
ようやく落ち着いたと思った矢先、黒髪少女こと早瀬 渚が陽にすごい速度で近づいてきた。

「ちょっと! なんで私があんたなんかと!?」

「いや、俺に言われても…」気迫に負けている俺は心底自分で情けないと思う。

「いっておくけど! 私はあんたを認めないからね!」

「俺を認める認めないは結構だけど…」

苦手なやつとパートナーになってしまった。だが、己の目的は変わらない。

目的さえ叶えられればパートナーなどどうでもいいのだから。

「…俺の何が気に入らないっていうんだ?」

一応聞いてみることにする。理由も無しにこれだけ罵倒されるのは気に食わないと思ったからだ。
すると渚は思いもしない返答をしてきた。


「強そうじゃないからよっ!」


「…は?」

コイツはなんだ、人を見た目で決めるのか。
ついつい口を大きく開けて呆然としてしまう。

「実際弱いでしょ? あんた」

コイツはどこまで自分のことを罵倒すれば気が済むのか。陽は我慢の限界だった。

「あのなぁっ! 人をそんだけバカにしやがって! 自分はどうなんだよっ! 自分はっ!」

その言葉にムッとしたようで渚は怒鳴る感じで返す。

「私は強いわよっ! あんたみたいなの、足手まといなのっ!」

「おいおい、見た感じ弱そうなのはお前のほうだけどなっ!?」

「んなっ…! ならいいわよっ! 私の実力見せてあげるっ!」

そういって急ぎ足で渚はその場から立ち去ったかと思うとまたすぐに戻ってきた。

「今から任務いくわよっ!」

「はぁっ!?」

二年になってそうそうに任務にいくだなんて思ってもみなかった。それに訓練してないのに大丈夫なのか。

「そこまでいうなら私の実力見せてあげるわっ!」


よく見たら紙切れを渚は握り締めており、そこに書いてある内容をよーく見ると

"テロ組織部隊、撃退"

「…え?」

この任務は普通の任務ではない、そう


難易度が陽たちのレベルだと高すぎるほどの任務内容だったのである。