ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 心が崩壊する時-Love reason- 題名微変更しました ( No.12 )
- 日時: 2010/10/18 21:59
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://PCが変わったので名前も変えてみました← 十六夜です
更新します。
「結衣……?」
目の前に居る人が俺の友人だと、信じたくなかった。いつも通りの笑みなのに心は全く笑っていない。
いや、それ以上に目の前に居る人が友人だと思い込みたくない理由がある。
何故? 何故か?
今目の前に居る俺の友人—長峰結衣は……
刃 物 を 持 っ て 女 子 生 徒 を 襲 っ て い た の だ か ら 。
しかも表情は泣いても怒ってもいない。ただただ冷たい微笑を浮かべていて頬に付く血も気にしていない。
外見が少しでも違えば僕は彼女を長峰結衣と認識は間違いなくしようとも思わないし思えない。
けれど彼女の茶色のウェーブのかかったロングヘア、いつも通りのポニーテール、茶色のかかった黒目。
その外見の描写全てがいつもの彼女を表現している。
勿論いつもの彼女が頬に血が付いている訳でも刃物を握り締めている訳でも無いのだけれど。
「どうしたの? ……夏苗」
夏苗、と彼女は俺の名前を読んでふわりと微笑んだ。けれどその微笑みからは温かさは微塵も感じられない。何かを見下している様なとにかく冷たい笑み。
……あぁ、これが何かのみ間違いであれば良いのに。
勿論そんな事などあるわけは無いけれどそう願う。
「私、変?」
「…………」
沈黙が流れた。空気も重くまともに呼吸が出来ないんじゃないかと思うほど空気が重い、気がした。
けれどこれは沈黙のせいで流れる雰囲気。そう自分に言い聞かせて俺は彼女の前に立ちはだかる。
「変だよ。少なくともいつもの君じゃない」
「どうして? いつもの私だよ? おかしいのはコイツでしょ?」
平然と、いつも通りのテンションで彼女は言った。刃物で先ほど襲った人—確か1年の後輩を差す。
その差し方はいつでも刺すよ? とでも言いそうな彼女のちょっとした脅迫を表している気がした。
……何で彼女は同級生、しかもクラスメートを襲った? しかも授業をサボってまで……
いつもに無い彼女の何かに囚われた様な顔に俺は若干冷や汗を掻きつつも彼女をじっと見つめる。
今日の彼女は、絶対におかしい。そう確信した。
「だって私が佐嶋先輩にラブレターを出したって言ったら私昨日佐嶋先輩と話したよ〜って気持ち悪いくらい話してきたんだよ? 夏苗はうざいと思わないの? 馬鹿だよね、そんな事話さなければ良いのに。」
ふふふふ……と奇妙な笑い声を上げながら彼女は先ほど襲った女子生徒を蹴り飛ばした。
女子生徒は軽く体を縮こませる様にくの字になると気絶したのか目を閉じる。一応死んではいない。
けれど、それでもだ。刃物を所持して生徒を襲ったのは間違いない、俺は覚悟して彼女に近づく。
「刃物を置いてとりあえず落ち着こう」
「あはははははは! そうやってどうせ私をおかしいって思ってるんでしょ?」
ぴっ。次の瞬間には何とか顔をかばった腕が刃物によって傷つけられ、細くも長い傷を作った。
そして傷からは血が流れ体育館前の床をぽつり、ぽつりと赤色で汚す。恐ろしい光景でもある。
しかし彼女はそれでも驚かずやはり平然としていた。
「先輩は……私の先輩だよ? 夏苗も知ってるでしょ?」
そう言い1歳年下の俺の幼馴染—長峰結衣は奇妙な笑い声を再度もらしながらこちらへと近づく。
今度の今度こそ、俺は返事をする術を持たなかった。