ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 心が崩壊する時-Love reason- 題名微変更しました ( No.13 )
- 日時: 2010/10/19 21:00
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
- 参照: http://PCが変わったので名前も変えてみました← 十六夜です
「っ…………」
情けないとは思うが返事する声が出て来ない。結衣はそんな様子の俺を見ながらにやっと笑う。
その笑みの禍々しさは普段見る事などは無いせいか俺を異様に怯えさせた。
コワイ? 彼女ガコワイノ?
……自分に聞いてみたって何一つ分かる訳が無い。
けれどそれに呆れて溜息を付ける雰囲気では無い為何も出来ずただその場に立ち尽くす事しか出来なかった。本当に、情けないと思う。
「……」
「ふふふふふふふ。別に良いんだ。佐嶋先輩が私の方へ振り向いてくれれば良いんだから」
何が良いのか。振り向くとでも思っているのか。
そう、思うのに……何故言えないのだろう。
彼女の持っている刃物が日の光に辺り、ぎらりと光を放つ。着いている血が生々しく映る。
「夏苗、分かってると思うけど邪魔しないでよ? 邪魔したら夏苗だけじゃなくて……光君も危ないから」
「……!!」
光君、と言う言葉をやけに強調して言ってきた言葉は俺の動揺を誘うには十分すぎるほどの言葉だった。
光……簡単に言うと俺の弟。3歳年下の現在中学2年生で結衣とは何回か面識のある仲である。
ブラコンでは無いと思うが一応弟にも命の危機がいつやってくるのかは分からないとなれば動揺した。
そして結衣はそれを察した風にまた不気味な笑みでにやりと笑う。
「……ね? だから邪魔だけはしないでよ?」
「……………………分かったよ。邪魔はしない」
俺はしばし黙った後、こくりと頷く。結衣はその反応だけで十分だったようで満足した風に溜息を着く。
そしてまだ意識を失っている女子生徒を担ぎ、結衣の顔だけは見ないで静かに呟いた。
「だけど、これ以上は……人を傷つけないでほしい」
これ以上は、被害を増やさないでほしい。切なる願いを込めて結衣に話してみる。
結衣は一瞬だけ切ない様な表情を見せ、すぐにもとの表情へと戻すときっぱりと言い張った。
「他の人が、私の邪魔をしないならね?」
(……あぁ)
やはり、駄目か。もう誰も彼女を止める事は出来ないのか…………内心心が痛むのを感じた。
彼女はもう、誰にも止められない程狂い出している。
何があったのか、いつ彼女自身が“崩壊”してしまったのだろうか。考えても仕方はないけれど考えた。
どうして、彼女はこんなにも狂いだしたんだ?
誰が彼女を元に戻す事が出来るんだ?
どうして、俺は彼女を助けられないんだ?
誰が彼女を、心を救ってくれるんだ?
—————————俺には、分からない。
それすら言えない自分の歯痒さを感じ唇を思い切り噛む。勿論それでどうなる、と言う話だけど。
そして彼女に背を向け、女子生徒を背に乗せた事を確認すると歩き始めた。
「…………櫻井先輩」
そして暫く歩くと女子生徒が目を覚まして今にも泣きそうな声で俺の事を呼ぶ。
「今は無理しなくて良いよ」
色々な意味を含めようやくまともに言葉を発せた。そしてそれはその子の涙腺を崩壊させたのかその子は嗚咽を漏らしながら泣き始めた。
泣かなくても良い。悪いのは君じゃない。
……喉の奥で引っかかった言葉を心に残し俺は何も言わずただ、歩き続けた。
頬に伝った物は果たして、何なのだろうか。