ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 偽りの中の輪舞曲 ( No.13 )
日時: 2010/11/12 16:24
名前: 遮犬 (ID: pD1ETejM)

「——流都? 流都? 聞いてる?」

「のわっ!」

鼻があたるかというほどの距離で夏喜が接近し、流都に話しかけていた。

「何か考え事?」

「いや…別に、なんでもないよ」

自分たちが生まれた時のことを思い返していたなどと、言うはずがない。言いたくもない。

「ふぅん…ま、気にしないようにね!」

なんとなく夏喜は自分の心を見透かしているような気がする。だが、本心はわからない。

「…流都、夏喜。用意、出来たよ?」

冬音姉さんが僕たち二人に声をかける。冬音姉さんはいつの間にか背中に大きな刀を背負い、
さらには動きやすそうなジャージのような服へと着替えていた。

「ん、私も準備万端だよ〜?」

夏喜もいつの間にか手袋をはめ、邪魔な長い髪をポニーテールにしていた。

「よし…わかった。じゃあ…行こう」

自分の至るところに"鉄のモノ"を押し隠し、ノートパソコンを軽めのバックに入れて言った。


自分たちは、何のために生きているのか。

人間ではない自分達は、生きていていいのか。

この世は、腐っていた。腐敗している。

クローン技術が驚異的発達をし、遺伝子の組み合わせによって思い通りの子供が誕生する。
クローンがその体に新しく力を得るため、維持するため、存在を残すために、人を喰らう。
人間の影に隠れて、人を喰らう者たち。いつしかクローンを撃退するための組織も出来るほど。


自分たちの目的はただ一つ。

生まれた原因、そして…その奥にある世界の真実を見つけ出すこと。


そのために、生まれてきたような者なのだから。


都市の中で一際大きなビルが建ってある。時間帯は夜で周りは数々の光によって美しい光景を創り出す。

「さぁてと…」

流都はパソコンを開き、無意識のようにすばやい動きでキーボードを叩き出す。
そして最後にエンターキーを勢いよく押し、横にいる二人の姉妹に告げる。


「——暴れて、舞って、壊そうか。

        世界の真実を見るために」

そこに、自分達の居場所があると信じて。