ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blue cross スレ100突破しました! ( No.103 )
- 日時: 2010/11/15 17:44
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
18 二度目の嘘
光は驚く間も無く、胸を真紅に染め、床へと落ちる。そしてあっけ無く……命の灯火を永遠に消す。
夏苗は、まだ、笑ったままだった。笑ってマシンガンを今度は双葉に向けているところだった。
……こいつは一体誰だ? 双葉は焦りを自分で感じ、それでも夏苗を直視する。
「あれ……俺さっき、言ったよね? “吸血鬼”だって……“吸血鬼”、知ってるでしょ?」
ニコリとでは無く“吸血鬼”の様にニヤリと笑う。……双葉の頭に“吸血鬼”の情報が浮かぶ。
“吸血鬼”。人の血を吸い陽光と十字架に滅ぶ魔物。血を吸われる事により人さえも“吸血鬼”となり人狼を従える魔物。そして
人間を超越する能力を持つ、魔物。
「そんな奴信じちゃって良いの?」
ぐしゃり。と音がしたかと思うと夏苗は光の頭を踏みつけていた。無残に、面白そうに。
周りの乗客は銃声に、夏苗に、そして光に驚き悲鳴を上げるが誰も近寄れない。
否、殺気で足が震え上がり動く事すら出来ていなかった。
そんな状況の中、双葉が口を開く。
「ふぅーん……別に、信じる気は無かったけど」
「あはは、そうだよね? この馬鹿な奴、夏苗の事を信じきってたんだねぇ♪」
面白そうに、さぞや面白そうに光の頭を何度も何度も何度も踏みつける。既に頭から血が出ていた。
けれどそれでも“吸血鬼”は光の頭を踏みつけるのを止めない。笑っていながら復讐でもしているかの様だ。そして段々光の頭が形を失ってゆく。
ただの無残な赤い塊へと化して行く様だった。
「……ところで、やっぱ殺しても良いよね?」
双葉は平静を装いながら“吸血鬼”に問う。“吸血鬼”は光の頭を蹴飛ばしてマシンガンを床に立たせる。どうやらOKと言う意味らしい。
……しかし双方すぐに動く事は無い。“R・S部隊”の優秀な人物達、ならではの特性だった。
戦闘で言えばある意味最も大切な相手の動きを見るという所であろう。
暫くの沈黙の後、先手を打ったのは双葉だった。
「……」
恐るべき速さで夏苗に近づき、ブーメランを投げる。そして急いで後方に下がった。
一発で仕留めるのは不可能と考えた末の行動だった。しかしそれは
「遅いね」
何処に居ても、不可能と言う点では同じだった。“吸血鬼”はブーメランをあっさりとかわし列車の屋根を破り上へと飛び、しかし音すら立てずに双葉の背後を取る。……暗殺者の様な恐ろしい速さだ。
しかし、今の双葉にそれを考える余裕すらない。敵が自分の背後に居る。駄目だ、終わった。
「夏苗だと思って、油断でもした?」
“吸血鬼”は容赦無くマシンガンの銃口を双葉に着けてトリガーを引く。
……否、引“こうとしていた”。
「……?」
死を覚悟して目を瞑っていた双葉が、恐る恐る目を開けるとそこには赤い目の“吸血鬼”では無く茶色のかかった黒目のいつもの夏苗が
「ごめん……本当に、ごめんね」
涙を流して、それでも微笑んで
自分の脳天を撃った。