ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Blue cross  再度オリキャラ募集中です ( No.55 )
日時: 2010/11/05 11:23
名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)

08 我ら、神を崇めたり

教会。70年前の教会と呼ばれるものとは打って変わり穏やかな聖なる場所は何処か汚れていた。
いや、実際教会の中や外装は綺麗なのだが汚れていたのは崇め。即ち神を崇める心だった。
異教者が増えてからはイエス・キリストが“吸血鬼”に塗り替えられ、キリスト教も消えつつある。
何しろ教会を陣取る“異教者”にとっては“吸血鬼”以外を崇める事は邪道だと言われているのだから。
尤もな話、それは上辺だけなのかもしれないのだが。


「皆、今日から神が動き出したらしいよ」


教会の中。“吸血鬼”の石像の前で恭しく膝を着く人々の前に一人の少女が現れる。
紫色の髪のロングヘアに黒色の瞳を持つ美形の少女。そしてその顔立ちは何処か小山餡子を髣髴させた。
彼女の名は小山凛子。もう説明はいらないであろう、小山餡子の姉である。


「うっひゃ〜……神が動いたのかよ」


聖書らしき書物を読んでいた短い白髪を持つ少年が本を閉じながらやれやれ、と首を振った。
しかし彼の行動を咎める者は一人も居ず、彼がこの人物の中で高いくらいを持つ事が良く分かる。
そして凛子はそんな彼を見ながら「そんな顔しないの」と半ば呆れ気味にそう言った。


「って……あれ? メイ子はどうしたの?」


「私ならさっきから此処に居たわ」


やや呆れた風な声がしたかと思うと車椅子を動かす音がしてその音と共に一人の少女が現れる。
凛子と男とは打って変わり、あまり珍しくない容姿。茶色の混ざった黒髪をゆるく二つ結びにしていた。
しかし口調から何なのか何処か何かを決意している様な強さを持っている感じがする。
凛子は「あぁ、ごめんね」と少し申し訳無さそうな表情をすると苦笑しながら何かの資料を見て話し出す。


「神が動くに伴って……R・S部隊の奴らが私達を消そうとしているらしいの。此処まで言えば分かる?」


凛子は少し哀しそうに目を伏せると資料を手に持ち直し全員の方を見た。
全員頷いたかは分からないが少なからず男とメイコは頷いている。内容が分かったらしい。
つまりは自分らも“吸血鬼”と同様、戦いをすると言う話だった。
そしてメイ子が溜息を着きながら凛子の方を向く。


「言っとくけど、私は足の事があるから戦闘には向かないわよ?自分の身くらいは自分で守るけど」


そう言いながら何かの針を取り出し針を持っていない方の手で自分の足を指差した。
実は彼女は元々からの“異教者”では無く逆に“吸血鬼”や“人狼”を呪っている者だった。
抵抗して日夜逃げ回っていたらしい。しかしその途中で足を怪我して“異教者”となったのだ。
凛子は勿論それを知っていて、苦笑して頷く。


「えぇ、知ってるわ……自分の身を守れるのならそれで良いけどね」


そう言うとメイ子は納得したのかもう何も言わなかった。すると次に白髪の青年が口を開く。
それと同時に手から蒼い炎を出した。


「つまり……R・Sの野郎共をぶっ放せって事だろ?」


「言い方は悪いけど、そうなるわね……と言うより寧ろ夏碑の言う通り?」


すると凛子と夏碑と呼ばれた男性の声と同時に他の“異教者”が立ち上がった。
凛子は促す意味で頷くと、“異教者”達は走り出し恐らく武器を取りに行く。
残された三人はそれぞれの性格に沿った反応をしていた。


「結局、どちらに意があるのかしらね……」
「さぁ……分からないけど、戦うしかないでしょ?」
「俺らの神は何でも良いんだよ」


適当に崇められればな、と夏碑は呟いた。