ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blue cross 再度オリキャラ募集中です ( No.63 )
- 日時: 2010/11/06 16:47
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
09 血に塗られたあの日
——————何かの声がする。
悲鳴? 叫び声? とにかく大きくて、鼓膜にやけに響く高い音。そしてぐちゃりと言う何かを抉る音。
そして何かが崩れる音がして、そこから幼い泣き声が聞こえた。……一体誰の鳴き声だろう。
その泣き声はあまりにも悲痛そうな、辛そうな泣き声でその場の状況を何処か感じさせる。
すると泣き声に続いて声がした。
「お前何か人間じゃない! この———人殺し!!」
ドウシテソウイウコトヲイウノ? 突然自分の脳裏に悲しみのような切ない感情が巡る。
おかしい。まるで自分が人を殺したみたいじゃないか。———そこで今度は自分の中で声がした。
「お前は同属を殺しているんだ。例えあそこに入って人間ぶっても所詮は我らの同属だ」
違う。違う、違うんだ……どうして自分がそう言う事を言われているのかと考えずに否定した。
違うんだ、俺はお前らの同属じゃない。心の中でソウ呟く。けれど泣き声と響く声は止まらない。
違う、違う、違う……俺は人殺しじゃない、同属殺しじゃない……絶対に違う!
だって、俺は——————
「……苗……夏苗!!」
そこで突然目に光が映る。そして見上げると心配そうに俺を見つめる光の顔。
眩しい光、窓から見える風景、温かい座席。其処はさっきから乗車している電車の中だった。
あぁ、任務場所に行く間に寝ちゃったのか……瞬時にそう悟って大丈夫だよ、と光に伝えた。
すると光は安心したような表情を浮かべ起き上がる俺から離れるとふぅ、と溜息を着く。
「びっくりしたよ? すっごい魘されてたから」
そう言い驚いた表情を見せたのは双葉。実は今の任務で、色々グループを分けていたのだ。
一つ目のグループは俺、光、双葉。
二つ目は彩隊長、餡子、レン、來華。
三つ目はアネス、彩佳、そして一足先に来ていた“R・S部隊”のメンバーウェンズデー・ベル。
となっていて、現在一つ目のグループ。つまり俺と光と双葉で移動していると言う訳になる。
ちなみに俺らのグループはイギリスのロンドンの“吸血鬼”退治と共に陽光の十字架の調査をするらしい。
「ごめんね、ちょっと悪い夢を見てたんだ」
心の底から二人に謝り、頭を下げる。けれど本当に悪い夢だったと改めて感じた。
……“吸血鬼”についての事をさっきまで散々考えていた末に寝てしまい、こんな夢を見たのだろう。
自分にそう言い聞かせ自分の頭をクシャクシャと撫でると少し落ち着いた。
ふと電車が止まり、駅を見るともうロンドンの近くまで来ている事を確信する。
いくら“吸血鬼”が現れても世界中の交通機関にはああまり影響は無い。何故かと言うとそれは“吸血鬼”の特性に合った。勿論それは誰でも知っている。
“吸血鬼”は日光に弱い。つまり嫌でも光のある駅や電車の中やバスの中では“吸血鬼”は活動出来ない。
その上、夜以外は“吸血鬼”は全く活動出来ないので、そう言う点では“吸血鬼”の特性に感謝する。
「カナエ、険しい顔してるよ。チョコレート食べる?」
「え? あぁ、大丈夫……ちょっと考え事してただけだから」
頬杖を付き、窓を見ていると双葉に板チョコを渡される。俺は良いよ、と手を振ると双葉は頷いた。
どうやらかなり険しい顔をしていたらしい。
「あ、もうすぐ任務に書いてある街に着くって」
光がそう言うと窓からは何処か城の様な建物が連なる風景が見える。
イギリスの首都、ロンドンの風景だった。