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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blue cross ( No.88 )
- 日時: 2010/11/12 20:24
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
12 されどそれを世の中と彼は言う
「……うぷっ」
隊長の言う威厳は何処へ行ったのか。ロシアへと向かっていた彩、餡子、レン、來華のグループはそれまで飛行機に乗っていて現在はロシア行きの電車待ちだった。そして此処は駅の女子トイレ。いかにも体調の悪そうな顔をしているのは“R・S部隊”隊長の雨風彩であった。
何故体調の悪そうな顔をしているのか。それは彼女の体質—極度の飛行機酔い体質が大きく関係している。
「また餡子に笑われるね……これは」
たはは、と一人苦笑しながら顔を洗う。それでいくらか気分がスッキリとした。
そしてふと鏡で自分の顔を見てみる。鏡には映りきらない長い黒髪、飴色のやや大きい瞳。苦笑した風に見える表情——————……
「……また、か」
何かを思い出したのか彩は笑みを消して、しかし、それを隠すかのように頭を掻く。
苦虫を噛み潰した様な不快そうな表情に、普段の彩を知るものであれば少々驚くであろう表情を見せた。
最もその彩を知っていると言うのも、“どの”彩を知っているのかにもよるが。
〜〜♪ 〜〜〜〜♪
ふと、その不快そうな表情を壊すかの様にトイレの外から歌が聞こえた。曲調からすると軍歌だろうか、と彩は推測を立てつつトイレの外へと出る。
餡子やレンや來華はまだそれぞれ他のところにいるらしく、今此処に居るのは彩のみだった。
否、彩と
「おや、私以外にもこんな酔狂な所に居る人は居るんだね」
コードネーム・ジャッカル。世界中を廻っている消息不明の“異教者”。
現在の状況で言えば、彩の敵であった。
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