ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blue cross ( No.94 )
- 日時: 2010/11/13 15:26
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
13 されどそれを世の中と彼は言う 中編
「……ジャッカルさんでしたか〜」
いつもの風に、間の抜けた声を出した彩はそれでも静かに愛刀———風昴を抜いた。
刀を持った彩は、いつもの間の抜けた声を出していながらも普段見た事の無い殺気を出している。
一方でジャッカルも人をくった様な皮肉げな表情を顔に貼り付けながらマグナムを出す。
両者共々、先頭の開始を合図しているかの様だった。
「……」
彩は、止まっていた。そして目を瞑っていた。しかし目を瞑っていても情景はくっきりと映る……長年の経験の賜物だ。と彼女は心の中で苦笑する。
そして彩は感じる。目を瞑る前の、そして今の風景、ジャッカルの姿、そして———
彼の常人であれば足が震えるほどの殺気を。
「……」
持っている風昴からも、自身で自覚している殺気を感じる。これは彩自身の殺気だった。
刀を抜くのは久しぶりだったっけ……そんな事を思いつつようやく閉じていた瞼を開ける。
そして
「……悪いけれど、お先はいただきますよ」
走り出す。その速さは常人であれば見る事すら困難だった出あろう。しかし、“異教者”であり軍人であるジャッカルにとっては
「はは、面白いね」
普通の“R・S部隊”の奴とレベルが違う、と言うだけの話でもあった。
彩の速さを見つつ銃を構え、特に抵抗する事も無く、驚くべき速さで
「……!!」
トリガーを、引いた。当然弾丸は常人には見えないスピードで飛んで行き彩に当たる。
パァァァァァァンッ!!
銃口から出て来る煙と共に派手な音が木霊する。……しかしそこにあるのは驚くべき光景だった。
撃たれていた“はず”の彩は、刀を構えていて、銃の弾を切り落としていた。しかもその刀———風昴は黄緑色の魔術の刃を纏っていた。どうやら魔刀らしい。
流石のジャッカルも驚いた風に彩を見つめる。普通なら有り得ない事を彩が成していたからである。
銃の弾を刀で切り落とすなど見た事が無い、そう目が語っている。
「酷いねぇ〜……まだ十八歳の若い娘っこに特殊な弾を使っちゃって」
自分の事を若い娘(いや、事実そうだが)と称する“R・S部隊”隊長の少女は刀を片手に笑っていた。
弾が特殊な事を見抜かれていたのか、とジャッカルは彩と対照的に溜息を着く。
・・・・・・ ・・・・・・
だから弾を押さえずに切り落としたのかとも推測を立てる。どうやら、特殊な弾と言うのは本当らしい。
「全く、そんな物騒な物を持っている娘っこ何て聞いた事は無いんだがね?」
ジャッカルはそう言いながら風昴を指差す。彩はそれとこれとは別ですよ、と笑いながら言う。
そしてジャッカルは精悍な顔の笑いの表情を見せつつ再度銃を構えたかと思うと
「……やはり、面倒だね」
躊躇無く彩を撃った。