ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Blue cross ( No.99 )
- 日時: 2010/11/15 16:54
- 名前: 浅葱 ◆jnintUZIrM (ID: m26sMeyj)
16 心臓が疼く
何故? 夏苗は現在イギリスに着き、任務地へと向かう駅へと既に乗っている。
任務地へ着くのは今日の午後十一時。任務地へ着いた後に報告を入れ、翌日に任務を行う。
しっかりしてるスケジュールに生活も自然と沿ってきてもうすぐ任務地へと着く。
それなのに、何故かは分からないが、夏苗には嫌な予感がした。自分でさえも良く分からない程に。
気のせいだろう、多分思い過ごしだよね。夏苗はいつもの自分の様にそう宥めて落ち着こうとする。
けれど、いやな予感は収まる所か悪化していた。心臓が高鳴っていた。
「……夏苗、さっきから大丈夫か?」
心配そうな光の声。余程恐ろしい顔でもしていたのか。夏苗はにっこり微笑んで大丈夫だよ、と言う。
内心大丈夫と正反対だと言いたいほど大丈夫ではなかったが。……双葉は特にそんな夏苗達を気にする事は無く、チョコレートを食べていた。
「……」
特にする事も無く、しかし眠るとまた嫌な夢を見そうで夏苗は外の風景を見ていた。
外は夕方を越し、暗い深い黒色が空を覆いつつある。天気がそんなに良くないのか星は見えない。
ただただ黒い空で、また嫌な予感を彷彿させそうだったので少し目を伏せる。
気のせいと言っていた自分は何処へ行ったのか、夏苗は苦笑した。
「……あれ?」
ふと光がポカンとした感じの間抜けな声を出す。そして不思議そうに夏苗を見ながら、指を差した。
「夏苗の目……今赤く光ってる……大丈夫か?」
目が赤く光っている? 突然そんな事を言われ夏苗は不思議に思いつつも窓を見た。
先ほどまでは特に窓に映る自分の目など気にしていなくて気付かなかったが本当に目が赤くなっている。
その途端、夏苗は背中にぞくりと冷たいものが走るのを自分で感じた。
冷や汗が流れてくる、心臓の鼓動が強まる、呼吸が少し荒くなる。
怖い、恐ろしい、苦しい……色々な感覚が一度に襲い掛かってくる。
「ッ……」
色々な感情がフラッシュバックをするかの様に夏苗の脳裏に映像を映し出す。
突然の身体の異変に、夏苗は眩暈がして来たが光に心配されると流石に悪いので何とか隠そうとする。
……心臓の躍動が自分の耳から聞こえてくる。背中の悪寒が背中だけではなく首にまでやって来た。
ドクンッ ドクンッ ドクンッ
(……駄目、だ……何なんだろう……これは)
自分の変化に戸惑いつつ窓に映る赤い瞳を見る。意味が分からない、何で突然……こんな事に……。
しかしそんな頭で考えている余裕などを消し去るかの様に体が強く疼く感触が襲ってくる。
ドクンッ
(駄目だ)
ドクンッ
(このままじゃ……)
ドクンッ
(自分、が……)
ドクンッ
(あの、と、きの様、に……)
ドクンッ
(駄、目だ……! それ、だ、けは……絶……対に……!!)
思考すら途切れ途切れになって来る。何を考えて居るのかすら分からなくなってきた。
眩暈が激しくなり、ついに意識がブラックアウトしそうになる。夏苗は心の中で駄目だ、それだけは……! と呟く。
ドクンッ
(あ…………)
しかし、夏苗は、意識を失った。
そしてだからこそ、気付く事が出来なかった。
「夏苗……どうしたんだ? ……!!?」
心配そうにおずおずと自分に触れてきた光の手を振り払った自分を。
顔を上げてこれまでに無い邪悪な、殺気だらけの微笑を見せている自分を。
そして笑いながら
「櫻井夏苗は死んだよ?」
と、笑う、自分を。