ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 神の能力者 ( No.30 )
- 日時: 2010/12/07 19:41
- 名前: メゾ (ID: 4mXaqJWJ)
第二十二話 「風」
「ただいま〜」
スーヴァン帝の扉が勢い大きく開き、制服姿のトレアが入ってきた。「おかえり」とヴァニアが言った。コルルもソマリも側にいた。
「およ?!お兄様、二人に何かご用でもお有りで?」
にやにやしながら三人を見る。
「いや。ただ、二人から相談を受けただけだ」
「相談?」
ふっと表情が変わる。ヴァニアはにっこり笑って席を立ちながら
「僕の代わりに彼らの相談にのってやってくれ」
と言い、トレアの肩をぽん、とたたいた。
「はい」
にっこり笑って彼女も答えた。くるっと二人の方を見ると
「んで?相談というのは?」
と言ったが、
「その前に着替えなさい」
ととめられた。
「はーい」
しぶしぶ二人を自分の部屋の前で待たせ、着替えると招き入れた。
「ではもとの話題に戻ろう」
「ああ」
コルルがメニィとナタリーのこと、ソマリが怒らせてしまったことを話した。
「ふーん。で?何をしてほしいの?」
ストローでコーラを飲みながら上目づかいでコルルを見る。ソマリはと言うと、部屋の隅で山ずわりをしていた。どよーんとした空気が彼の周りにあった。
「彼女のことについて教えてほしい」
思い切って言った。トレアのことだ、却下かOKの確率は五分五分だ。でも、知らないと納得できない。彼はぎゅっと目をつむり、頭を下げた。ずーずーとコーラをすする音が聞こえる。
「……いいよ」
小さな、小さな声で許可を出した。はっと二人の顔が上がった。トレアはぱっとパソコンの前に座り、キーボードを叩き始めた。コルルもソマリも近づいてくる。
「名前は?」
「ナタリー・シフォレット」
たたんっ、と打ち込み、検索した。しばらくすると
「……うそ……」
静寂が流れた。
*
ヒュウウー ヒュウウウウウー
風を浴びていた。ナタリーは普通の住宅の屋根に上って、下を見下ろしていた。目を閉じ、過去のことを蘇らせる。
『おいでよ。外は気持ちいいよ』
一人の、たった一人の友達の声。
『森の中で見たんです』
殺された友達の妹の声。
『死ねよ』
兄弟の声。
『ぎゃああああああ』
脅える村の人々の声。
『彼女が村を消した…というには…?』
昼間の少年の言った言葉。
すっと目を開ける。ふと見ると、隣には「トレア」座っていた。
「気持ちいいね。ここ」
にっこり笑って言った。驚き、たっと間合いをとった。
「……皇女…様…?」
めったに開かない口から声が出た。「トレア」は
「違うよ。私はユオ。あなたの言う子にそっくりみたいね」
「トレア」———ユオはふふっと笑うと、ふわっと姿を消した。
「……?」
首をかしげ、また風を浴び始めた。
*後書き*
さてさて、一瞬しか出てこなかった「ユオ」ちゃん!
彼女もけっこー重要な役割をもっています。
後半ぐらいから「ユオ」はたくさん出てきます。それまでどうか忘れないであげてください。
ナタリーの過去を少し出しました。ですが、あまりここで出すと、「過去編」の面白みがなくなるのであまり考えないでください。 はい。
もう少しで私が楽しみにしている場面がやってきます。ぜひ読んでください!!
第二十二話、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
メゾ