ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 神の能力者 ( No.48 )
日時: 2010/12/27 13:55
名前: メゾ (ID: Btri0/Fl)

第三十六話  「興味」

空をずっと見ている。もう何時間も。地面に寝転んでいるから首は疲れない。何度か少し眠ったり、起き上がったりしたが、結局また空を見ていた。
「はーい。死怨。おやつ一緒に食べない?」
死怨の背後から、だて眼鏡をかけた女が、クッキーやジュースをトレイに乗せ、持って立っていた。近づいて来ると、隣に座った。
「魔鬼」
短く言うと、女はにこっと笑い、クッキーをパクンと食べた。
「あなた、もう十時間近くここにいるよ。飽きないの?」
もっともな質問をした。死怨はジュースを手に取り、首をかしげた。
彼女は自分がここに十時間ここにいたことすら気づいていなかった。ときどき何か考えようとしたが、考える内容が思いつかなかった。
しかし、一つだけ考えることがあった。
トレアのこと。
どう殺そうとか、どうおびき寄せようとか、そういうのではなく、ただふわっと顔が頭の中で浮かび、今までの会話や出来事を思い出していた。
「ほえー。なかなか友達としての中は良かったようだね」
「読んだ」魔鬼が言った。死怨はきっと彼女を睨む。それでも彼女は気にせずにパクパクとお菓子を食べ続ける。
少し脅すか…。そう思い、いつも持っているナイフに手をかける。ふと、
「あのさぁ。驚かないで聞いてほしいんだけど」
という声がかかった。ナイフに手をかけたまま、
「何?」
と言った。その言葉を聞いて、今までお菓子を食べるのに夢中になっていた彼女がピタッ、と食べるのをやめ、真剣な顔でこちらの方に向いた。
「トレアちゃんの通っている学園に、転校生が来るんだって」
それで?という風な顔をしていると、にっと魔鬼が笑い、
「転校生は高級貴族の女の子。しかも、トレアちゃんがいることを知っている」
死怨の目が大きく開いた。ナイフから手を離し、とっさに左目を抑える。肩が震えだした。
殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ………
心の中でこの一言が繰り返される。しだいに茶色の目が濁り始め、藍色に近くなってきた。
パチンッ
すぐ後ろで指が鳴らされた。なったとたん、死怨の濁っていた目は元に戻り、きれいな茶色になった。
「ねえ。もうすぐで私、殺されるところだったんですけどぉ」
ふてくされながら後ろの人物に言う。そう言われた人物は、元に戻った彼女の顎をつかみ、
「もう少し強めにかけておこうか」
そう言って、「操」の能力をかけた。死怨はかかった瞬間、ドサッと横に倒れた。
魔鬼は倒れた死怨を起こしながら
「ね。気をつけないと暴走して、あなたも殺されるよ」
と言った。「操」の能力者は、
「僕はこの国、いや、この世界を支配するまでは死ねないよ」
と答えた。ふーんと彼女は頷き、緑色の目を光らせながら
「あのさ。トレアちゃんと転校生の様子、見たいんだけど。いい?」
と、少し控えめに言った。「操」の能力者——月の騎士は
「構わない。だけど、死怨は連れて行くな。暴走して、オリビアを殺すかもしれない」
後ろをクルリと向き、マントを翻しながら帰ろうとした。魔鬼はその後ろ姿を見ながら
「わかったーー」
と叫んだ。それからすぐに表情をもどし、考えた。
何故彼は実権を握りたがるのだろう。何故そこまでトレアにこだわるのだろう。
あの人ならすぐにあの能力でこの世界を支配できるはずなのに。
それほど彼女が強いということなのだろうか。
いや——あの子はただの人間。所詮は苦しみなど味わったことのない、ただの凡人。
苦しみを味わって生きて行くことこそ価値がある。
もしかして彼は———
それをわからせようとしているのか?
過去に何かあったから————。

そこで死怨が起きたため、魔鬼は考えるのをやめた。
「帰ろっか。疲れちゃった」
にこっと笑い、立ち上がった。







*後書き*
は〜。疲れました。 もうすぐ正月ですね。はやい〜^^
最近ヒマでヒマで仕方ありません。
「パソコンが友達の一人」と言っても過言ではないと思いますね。
話は変わりますが、風邪をひいたみたいです。
咳をたくさんします。皆さんも風邪には十分気を付けてください。
寝込み正月にならないように…。
さあ。今回もトレアちゃんが出てきません。
でも、ここで死怨ちゃんのことを出しておかないとあとあと大変になるので書かせていただきました。すいません。
疲れたので今回はここまでにしておこうと思います。ありがとうございました。
                     メゾ