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Re: 神の能力者 ( No.51 )
日時: 2011/01/17 13:26
名前: メゾ (ID: Dbh764Xm)

第三十九話  「疲労」

次の日。学校は休みだった。トレア、コルル、ソマリは朝早くからトレーニングをしていた。
「ソマリ。昨日の技をやってみて」
少し温まった後、そう言った。彼はうん、と頷くと、床に手をつき、しゃがんだ。トレアはぶん、と棒を投げ、ソマリから少し離れた所に落ちた。
「ここを狙って」
もう一本投げ、二本の間には、ほんの少しの隙間があった。彼は、ペロッと舌舐めずりをし、目を変えた。
ボコッ
鈍い音がしたかと思うと、隙間には、細長い氷の柱が出ていた。
「うーん。少しずれたけど…。まあ、いいか。なかなかいい技だね」
にこっと笑いながら彼女は言った。ソマリは立ち上がると、手をパンパンとたたいた。
またしばらくトレーニングを始め、少し休憩をとった。
「おい、ソマリ」
コルルがタオルで汗を拭きながら言った。ん、とソマリは水を飲みながらコルルの方を見た。
「お前、ティナのこと好きだろ?」
ぶ、と水を噴き出し、顔を一瞬で赤くした。そして、大声で言った。
「な…。な…。ななななな、なにを…」
「図星か」
スパッと言い切られ、彼はうつむいた。トレアもその声を聞き、話に入ってきた。にこやかに笑い、
「ふふ。あなたがあそこまでして人を守ろうとするところは見たことがないもの。一目ボレってやつ?」
と言った。ますます顔が赤くなる。ギャーと心の中は叫んでいた。さらに追い打ちをかけるように、彼女はウインクをしながら
「あのね。ティナからショッピングに行こうって誘われてるの。コルルもソマリも一緒に行こうよ」
純粋な笑顔で言った。それを見て、コルルは
「いいね。行く」
と返事をした。ソマリはげ、という顔をする。トレアはずい、と顔を近づけ、
「何か文句ある?」
恐ろしいオーラを出した。彼はがくがく震え、苦笑しながら
「はい!!行きます!!行かせてください!!」
大声を出した。よろしい、と言わんばかりに彼女は顔を遠ざけた。二人はその後、ショッピングをどのように満喫するかをずっと話していた。ソマリは
(やめてくれー)
と、ずっと心の中で言っていた。

*

夕方。
「ああ。トレア。わざわざありがとう」
ソファに座ったまま、セリアは言った。トレアはパタンと扉を閉め、コツコツと彼女のいる方に進んで行った。目の前に来ると、にこっと微笑み、
「お久しぶりです。お姉さま。お話とは何でしょう?」
穏やかに言った。セリアは嬉しそうに微笑み返し、座って、と自分の前にある椅子にトレアを座らせた。
近くにいたメイドに紅茶と菓子を持ってくるように言い、正面を向いて、
「ごめんなさいね。忙しいのに呼び出して」
申し訳なさそうに言った。そう言われたトレアは、ゆるゆると首を横に振り、そんなことありませんと仕草で表した。
「今日はね、久しぶりにリュランのことをあなたと話したいと思ったからなの」
カチャ、と二人の前に紅茶が置かれた。色とりどりの菓子が盛られた皿もテーブルの中心に置かれる。トレアはカップに手を伸ばし、それを口に運んで、一口飲んだ。
セリアは砂糖を入れると、くるくるとかき混ぜ、やがて砂糖が溶けると、紅茶を二口ほど飲んだ。そして、カップを持ったまま、
「あなたはどう思ってる?兄様が兵を出さなかったこと」
カップに満たされている紅茶を見ながら彼女は言った。それを聞いて、一瞬、ピクッと手が動いたが、冷静に答えた。
「なるだけ死亡者を増やさないようにする、最善の処置だったと思います」
「嘘ね」
セリアが冷たく言い放った。ふっとトレアは顔を上げる。少し眉間にしわをよせながら彼女を見る。
「あなたはまだ兄様が兵を出さなかったことに怒りを覚えている。今でもね。そして、何もできなかった自分に対しても怒りを覚えている」
違います、とすぐに言い返し、身を乗り出しながら
「違います。間違っています、お姉さま。私はお兄様のこと……」
「私は兄様のしたことは間違っていると思いますよ。トレア」
上目づかいで彼女はトレアを見る。カップを置き、真剣な表情で
「私はね。たった三人しかいない兄弟なのに、その一人を見殺しにしたということが間違っていると思うの。だってそうでしょう?今や本当の兄弟は私とあなただけ。兄様は救おうとしなかったのよ?」
やめてお姉様、と小さく言うと、ますますセリアは大きく
「血がつながっていないからってあんな小さな子を見殺しにするのは間違っているわ!!」
「やめてお姉様!!」
負けないくらい大声で耳をふさぎながら叫んだ。そして
「お兄様は見殺しになんかしていません!!たとえ血がつながっていないとしても、私たちのことを妹として見守ってくれていました!!」
ビクッとセリアが震えた。目を大きく開けて、トレアを見る。彼女は目に涙をためて、
「そんなことを言うためにお姉様は私を呼んだんですか…?」
はっ、と気付き、違うのよ…、となだめたが、
「そんなことをおっしゃるお姉様なんか、大っ嫌いです!!」
聞こえず、トレアはバン、と扉を開け、走って行った。セリアはふっと体の力が抜けたようにソファに腰掛け、少しせき込んだ。口を押さえた手を見ると、赤い液体がついていた。
「ああ…」
疲れたように、目をつぶった。



*後書き*
はい、皆さん気付いたでしょうか??
実は、ヴァニアさんとセリア、トレア、リュランは血がつながっていません。つまり、ヴァニアさんは「養子」なんです!!はい。まあ、引き取られたんで、リリアさんの息子ということになります。あ、皇帝もはいってますよ。
また小説が進まなくなってきました〜(・・)
ネタをまた探したいと思います。頑張ります。
でわでわ^^
ありがとうございました!!
               メゾ